♪ 探しものは何ですか?
見つけにくいものですか?
息子を誘拐されたジャーナリスト。
彼はワラを掴む思いで《明晰夢(ルシッドドリーム)》の中で手掛かりを捜すが、そこに待ち受けていたのは意外な真実だったッ!
…という物語。
つまり、夢が題材であり、キーポイント。これはとても扱いが難しい案件です。
何しろ、夢というのは“何でもアリ”。
一定のルールを設けないと物語が拡散しやすくなるのです。
そして、本作の場合。
夢の中の行動において制限を設けました…が、やっぱり、それでも説得力が薄いんですよね。何しろ、実際には夢というより記憶と呼んだ方が正しい代物。それがクッキリハッキリしている時点で眉唾物なのです。
だって、僕はそんなに憶えられないですから。
つい先ほどまで何をしたかったのか…それすら忘れてしまう人間が、周囲を観察し、その事象を映像として脳の片隅に記録しておく…なんてことにリアリティを感じる筈がありません。
勿論、この物語はフィクションです。
実際の事象・人物・団体名等とは無関係です。
なので、現実に寄せる必要はなくて「リアリティって何?食べれるの?」くらいの扱いで良いとは思うんですが…。
でもねえ。
やっぱり釈然としないんですよねえ。
この辺りが“夢”を扱うときの難しいところですよねえ。“夢オチ”が避けられるのも同じ理由だと思います。結局、何でもアリになった時点で覚めちゃうんですよ。
もしくは僕の場合、究極的に眠くなります。
それこそ、夜に見る夢と同じ原理です。
思うに、物語が受け手を引き留めるためには“現実”という重りが必要なのでしょう。
まあ、そんなわけで。
夢という題材を上手く調理しきれなかった作品。全体的には悪くない出来栄えだと思うので、自分で“現実”という重りを用意するか…それとも気にしないか…そうすれば楽しめる…かもしれません。
あー。父と息子の物語という大好物だったのになあ。