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ディザスター・アーティストのblacknessfallのレビュー・感想・評価

5.0
“ザ・ルーム”は知ってたよ。トミー・ウィゾーって金持ちが製作・監督・主演で自分をイケてるように撮ったんだけど、色々おかしすぎて笑える映画としてカルトになってるって。

その映画の製作過程とド金持ちのトミー・ウィゾーの人間像を浮彫りするのがこのディザスター・アーティスト。

そりゃあ、もう嘲笑う気満々だったんだよ、思い上がった金持ちの醜態をディスりまくれるな~💓みたいなテンションで笑

しかし、見終わってからすっかりトミー・ウィゾーさんの大ファンになってしまった。なんか、こんなに見てていとおしくなる金持ちは他にいないよ。

そもそも映画を作ることになったのも自分のためじゃないんだよ(でも、しっかり自分が主演だが、そこがまたかわいい笑)。
俳優養成学校?のワークショップ?で知り合って友達になった俳優志望のグレッグて若者(イケメン)をハリウッドで売り出すためなんだよ。
トミーさん、本当に彼によくしてあげる。地元からロスに移住して二人で活動するんだけど、ロスに持ってる自分の高級アパートに無償で同居させてあげるし。
映画の製作だって俳優の仕事が回ってこなくて打ちひしがれ挫折感に襲われたグレッグが「俺達で映画が作れればな」って愚痴ったのがきっかけなんだよ。
「それなら二人の映画を作ってハリウッドを見返してやろうぜ!(金なら腐るほどある)」とその愚痴に応じるトミーさんはむっさ男前だった笑

そしてグレッグと自分が輝くための映画の脚本を一人で書き上げるトミーさん。
そして、スタッフ、キャスト、機材、スタジオを自腹で揃えて撮影へ。

ここからがこの映画の肝の“ザ・ルーム”が完成するまでのドラマになる。
これはマジで色々おもしろすぎる。トミーさんは監督なんだけど勿論素人、なのに何故か自分の演出やビション、演技に絶大の自信を持ってて、プロのスタッフからの忠告をことごとく無視する。なので険悪な雰囲気が漂い、やがてスタッフも呆れて忠告をやめる(金はあるのでギャラの心配ないし貰えるもん貰えるしみたいなノリ)
で、残念なことにトミーさんは演技も演出も編集も1つも才能がないから、出来た映画はとてつもないヘンテコな作品になる。
色々おもしろすぎると言っときながら、おれの文才がないからどうおもしろかわからないと思うけど、この過程、自身の変な演技、演出をサイコーだとぶち上がるトミーさんやそれをうまく宥めてマトモな方向に修正しようとするスタッフとの会話を映画的ドタバタ喜劇風に画いているので本当におもしろいからご心配なく笑

でも、何で友達や自分の夢のためとは言えトミーさんはここまでやるのか?遊んで暮らせるだけの財産もあるのに。

その底の本音は映画の中のハッキリ画かれてないんだけど、おそらく、このトミーさんが人からすっごい愛されたい人なんだからだと思う。
それも自分の美意識や感性を多くの人に共感してほしいと強く望んでる。

何故そう思うかと言うと、グレッグと友達になるのもワークショップでトミーさんが披露したエキセントリックな演技(ひたすら暴れて悶絶する)と何者にも動じない舞台度胸に感銘を受けたグレッグが声をかけてきたからなんだよ。
その時、トミーさんは望んでた関係をグレッグとなら作れるんじゃないかと思ったように映った。それが証拠に自分が好きなジェームス・ディーンの映画をグレッグに見せ、ディーンの魅力を説き、それに彼が共感した時に、「二人で有名スターなろう」って誓いをトミーさんから持ちかける。
このシーン以降、すっかりトミーさんのピュアすぎる心根に魅せられてしまったよ、その前までは“これそーゆーんじゃなさそうだな”て思いつつ嘲笑いたい目線を残してたんだけど笑

だってさ、死ぬほど金持ってるんだよ。友達や取巻き、物理的に人が周りにいる環境作りたければ、金に物言わせればいくらでもできるわけなんだよトミーさんは。でも、グレッグが現れるまで一人なんだよ。
トミーさんに声をかけた時、グレッグは彼が金持ちだと知らない。そして彼の表現に惚れて興味を持ってくれた。ここがすごいトミーさんにとって大きかったんだと思う。

トミーさんは金持ちアピールしないんだよ、それどころか、隠そうとする。グレッグにも自分が金持ちだと吹聴するな!自分の年齢や出身地を勘ぐるな!と釘を刺す。

この自己顕示欲が人一倍強いのに自分の正体をひたすら隠そうとするとこに、過去に財力があることで人間不信に陥るようなひどいことがあったのかもと感じた。映画の中でもちょっとした意識のすれ違いで「俺を裏切るのか?!」「みんなが俺を裏切る」とか言って激怒するシーンが数回あるので気になった。それに作った映画の脚本は金持ちの主人公が親友と恋人に裏切られる話。
本当のところはわからないけど、財力をひけらかすことをしない上品さにも射たれたな笑

とにかく人間的にいいなと感じるとこからおかしいなコイツて思うとこまで、いやな部分が全然ない金持ちなんだよね、おれにとって。
こーゆー心の澄んだ金持ちが実在してることを知っただけでも、この映画観て良かったと思った。

友達のために自分の美意識を具現化した文学映画を作って、結果的におもしろトンデモ・カルト映画の金字塔になり、世界中の映画マニアを愉快な気分にさせ続けてるトミー・ウィゾーさん、サイコーすぎるよ😃 金の使い方が素晴らしい。
ゲスな自己顕示欲を満たすためだけに散財するzozo澤や高須はトミーさんの爪の垢でも煎じて飲めや( ᷇࿀ ᷆ ) ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ ♪

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