rage30

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

粉ミルクによる乳幼児死亡事件を描いた作品。

序盤は主人公のサクセスムービーという調子で進みつつも、遂には本作の本題でもある、粉ミルクによる死亡事件が描かれる。

粉ミルク自体は良くても、それに使う水が不衛生だったり、貧しさ故に薄めて使ってしまう人もいる。
それが原因で子供が病気になったり、栄養失調になってしまうわけだが、そうした使用者の環境や事情までは、なかなか考えが及ばないところでハッとさせられるものがあった。
実際に粉ミルクの影響を受けた乳幼児の映像も強烈で、痛ましい事この上ないし、主人公が向き合う葛藤も容易に想像出来る事だろう。

素晴らしいのは、その後の主人公の行動力だ。
会社を辞めるだけでは収まらず、実態を告発する為に危険を覚悟で奔走する。
実際、軍に拘束されたりもするのだが、「もしも自分が同じ立場だったら同じ事が出来るのだろうか?」と問い掛けながら見てしまった。
正義を貫かんとする彼を後押しする家族もカッコ良いし、本当のヒーローとは彼らの事を言うのだろう。

映画のラスト、てっきりハッピーエンドを期待していたのだが、まさかの玉虫色決着。
モヤモヤを残したまま映画は終わるが、このモヤモヤこそが問題の根深さを象徴しているのかもしれない。
私自身この事件の事はまったく知らなかったし、「ネスレ 粉ミルク」で検索を掛けても、なかなか事件の事がヒットしないので、彼らの隠蔽工作はそれなりに効果があったみたいだ。

個人的に印象深かったのは、国産の薬を敬遠するパキスタンの人々。
国産の製品を歓迎する日本人とは、まったく逆の価値観で興味深いものがあった。
国産の製品に安心感があったり、水道の水が綺麗だったり…そんな当たり前の中にある幸せを改めて気付かせてくれる作品でもある。
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