1914年。第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件
サラエボのホテル・ヨーロッパが舞台。様々な思惑を抱えながらホテルに集まってきた人たちと100年前のサラエボ事件とを交錯させながら、ドキュメンタリーのようにドライなタッチで描かれた群像劇。
表面的には平穏に見えてもふたつの記念碑(異なる見解)が存在するように、ボスニアヘルツェゴビナではすべてにふたつ以上の物語がある。無敵に思えたものが死を繰り返しているのに何故生き続けられているんだと言う者。骨を掘り起こしてまでパレードをする者。こうした未来を見ぬ者たちが長らく眠っていたものを呼び覚まし、一発の銃声が100年の時を超えて哀しく木霊する。
改めて民族紛争の歴史の根深さを感じさせられる。タノヴィッチの作品はいつも、平和への願いで溢れている。