ふぁいぽ

THE NET 網に囚われた男のふぁいぽのネタバレレビュー・内容・結末

THE NET 網に囚われた男(2016年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

キム・ギドク監督、この人の映画は心をダイレクトに揺さぶる。

資本主義の南側は独裁政治から一人でも救い出さなければと言う。 しかし、南に来るまではチョルは貧しくとも幸せに暮らしていた。 南には自由が有り裕福な暮しがあるかも知らない。 助けた女が言うように、自由だからって幸せとは限らない。 お金が幸せの基準でもない。

チョルは南でスパイの疑いで執拗に自白を迫られる。 韓国の警察?の取調べ担当官は自分の手柄の為、チョルを痛めつける。 世間にバレそうになってきたら、今度は亡命を勧める。 帰れば再び激しい尋問。 北に返される頃には心身共にボロボロである。

北に着いたら着いたで、無理やり笑わされ、歓迎される様子を映像で流す。 それを見て一般市民は益々、祖国に忠誠を違うのだろう。チョルも今迄そういう映像を信じてきたに違いない。だから祖国を信じて帰ってきた。

しかし、我が祖国でも、南と同じ扱い。 同志であるはずの保衛部の役人から拷問を受け、金を巻き上げられる。 自分の事しか頭にない役人達は北も南も同じ。 心が折れたのだろう。 家に戻される頃には精神は破壊されている。 もう絶望しか無かったのでは無いかな。 そして悲劇的なラスト。

あの後残された家族はどうなるのか。 子供の無邪気な姿を映したラストが秀悦。 家族と平和に暮らしていた男が、ちょっとした事で国家に翻弄される姿が あまりにも悲しかった。 こんなに近い国なのに、こんな事が行われていて、、、 分かってはいるが、やはり心が潰される。 フィクションだが、実話とも思えるような作品だった。