柊

苦い銭の柊のレビュー・感想・評価

苦い銭(2016年製作の映画)
3.9
映画としてどうか?と問われれば、まずこれを映画と識別しても良いのか疑問がわく。BSNHK世界のドキュメンタリーばりの現実を見事に切り取った作品である事は間違いない。
一握りの富裕層が日本、いや世界で爆買いしている裏側で、多くの中国人がこんな毎日を送っている現実に自分の理性の中で知ってはいたけど…と呆然とする。本人達も認めるあの膨大な粗悪品は世界へ流れていくのか?多分外行き着く先は日本が1番多いのではないかと安易に想像できる。メイドインチャイナ。その実態が浮き彫りにされた。彼ら30万人の出稼ぎ労働者を一言では言えないけど敢えて言葉にするならそれは無秩序。労働条件は無論、ブラックなんて通り越しているし、住環境や食事事情など目を覆いたくなるばかり。商品の先にある着てくれる人の喜びや満足など鼻から問題外。ただひたすら金の為にミシンを踏み、出来上がった商品をぎゅうぎゅう詰めにして流す。雨が降っても上はとりあえずシートをかけるけど梱包袋は雨降るコンクリートの上。
そんな姿を臆面もなく何故カメラの前に晒すのか?きっと彼らは人生の中で映画や芝居など観る機会もなく、劇場に足を運ん運ぶことない人生なのではないかな。だから世界中の人が作品を通して自分達を観るなんて想像もしていない。だから夫婦喧嘩もリアルそのもの。縫製工場もゴミ溜めみたいな状況。
リズミカルにミシンをあれだけ操れる人々がちゃんと自分の仕事に誇りを持てるような環境であったなら、彼らの世界もきっと違っていたと思う。
中国はいったいこれからどこへ向かうのか?不安しか感じないのは私だけではあるまいに。
柊