ナガノヤスユ記

サファリのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

サファリ(2016年製作の映画)
3.7
食肉生産のための屠畜とは違う、アフリカでの商用ハンティング・ビジネスを題材に、人間の自己正当化とその受容、矛盾を挑発的に提示するドキュメンタリー映画。

題材の目新しさはそんなにないと思われるし、ジャーナリズムとしての切り口も鋭いとは言えない。但し、ドキュメンタリー映画の肝はなんといっても、撮る側撮られる側の関係性にある。その意味で、眼前の行為を止めるでもなく、時にあからさまな演出を施し、共犯とさえ言える曖昧な立ち位置に堂々と立ってみせた製作陣のスタンスはなかなかに面白い。

僕自身はもはやモラルの崩壊した人間なので、この問題の是非を云々言う気は全然起きない。レジャーハントなんてそんなに興味ないけど、しないとも限らないし、毛皮は恐らく着ないだろうが、これからも肉は食べ続けるし、フォアグラみたいな狂気の沙汰もあるいはおいしく食べてしまうだろう。そういう軽薄さはままある。

とはいえ、あの醜い白人連中に安らかな死の瞬間など勿体ないし、彼らの宣う「善の殺し」などより遥かに悲劇的な、苦痛と恥辱にまみれた最期がもたらされればよい、むしろ願わくばあの映画が終わる前に誰かひとりでも、ヌーの大群に轢かれ、キリンの足蹴を食らい、代わる代わる蹂躙され、ハイエナの餌にでも成り果てればよかったのに、と思ってしまったこともまた紛れもない事実だ。

他者の命を値踏みするということは、自分の命もまた他者によって値踏みされるということに他ならない。僕たちはいつまで経っても、その地平から自由になれない。