プペ

マン・ダウン 戦士の約束のプペのレビュー・感想・評価

マン・ダウン 戦士の約束(2015年製作の映画)
4.2
アフガニスタンからの帰還兵が、荒廃した故郷をさ迷う異色の戦争映画「マン・ダウン 戦士の約束」。
戦争などの過酷な体験によって精神が崩壊するPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、米映画以外でも映画化されているが、とりわけ米軍帰還兵のPTSDは深刻だ。
近年では、実在の人物を扱った秀作「アメリカン・スナイパー」が記憶に新しい。


本作は、主人公ガブリエルが辿ってきた″現実″と″妄想″が混濁しているのが非常にユニークだった。
その荒んだ心象風景によって、観客はPTSDという病の恐ろしさを擬似体験する。
一種のミステリー仕立てになっているので詳細は明かさないが、親しい人の裏切りと戦場での理不尽な現実によって心を破壊されたガブリエルを待つ運命が、あまりにも哀しく、傷つき、絶望に突き落とされる。


「嗚呼、なんて惨い映画なんだろう」と思った。
あまりにも哀しくて、胸を掻きむしりたくなった。

この惨い映画に安直な救いは無い。
あるのは、PTSDによって苦しめられた家族の姿。
ラストの烈しく哀しいガブリエルが″正気″に戻った際に零す言葉の数々はその極みだ。
少々メロドラマに傾くのが気になったものの、国家が国民を戦場へ送り込んだあげく人間性を破壊する大罪を、ディストピアのような映像が何よりも雄弁に物語っている。

危ういバランスを孕んだ映画だったが、ちょっと凄すぎる。
当然作品としての好き嫌いはあろうが、この映画を観ずして、戦争映画は語れないだろうとすら思える。




自身の感情の整理がまったくつかぬまま、虚無感に苛まれつつDVDデッキからディスクを取り出した。
とてもそのまま勉強する気もしなかったので、虚無に反発するように強引に欲望を掻き立て、「パージ 大統領令」をセットした0時過ぎ。
プペ

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