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ブラナー・シアター・ライブ2016 「エンターテイナー」のmoviefrogのレビュー・感想・評価

3.0
ローレンス・オリヴィエの依頼によって1957年に書かれた、ジョン・オズボーンの戯曲 The Entertainer のリバイバル。

この作品を2016年に上演する意味が、このシアター・ライブからは感じ取れなかった。よく書かれた戯曲は歴史を超えて普遍性をもつものだと思う。例えばナショナル・シアター・ライブの「人と超人」や「二十日鼠と人間」は、演出の工夫により現代にも十分通じるテーマがくっきりと浮かび上がってきたが、今作は一体何を目指して制作されたのかが自分には汲み取れなかった。

また今作の俳優陣の演技の単調さにも疑問を持った。熱演ではあるけれど、常に大声で怒鳴るような発声をしており、間合いや緩急がないために感情の細やかな機微が前面に出てこない。特にケネス・ブラナーとソフィー・マクシェラの演技が非常に単調。

テレビなどの娯楽に押されて凋落したミュージック・ホール芸人の終焉を描く作品ではあるのだが、ケネス・ブラナーの、いい意味での華麗さ、華やかな資質が、アーチー・ライスという人物とは乖離してしまっており、熱演すればするほど落ちぶれた寄席芸人には見えなくなってしまっていた。ソング&ダンスまでこなすことのできるケネス・ブラナーのスター性に邪魔されて、アーチー・ライスという人物の情けなさ、ダメさが伝わってこないのだ。

ジョン・ハートの舞台演技も観ることができ、とても贅沢なシアター・ライブなのだが、個人的にはあまり心に迫るものが感じられない作品だった。また、撮影方法も引きの映像がほとんどを占めており、舞台公演を敢えてシアターライブにする意味を、あまりよく考えて撮影されていない印象を受けてしまった。
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