arch

スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー/純愛日記のarchのレビュー・感想・評価

3.6
ロイアンダーソンと言えば「パンショット」とどこか無機質な美的センスの美術なのだが、この初長編作品ではそのどちらも見られない。
躍動感と甘酸っぱさのある最高にフレッシュな恋愛劇になっている。象徴的なのはブドウを噛じるワンカットだろう。

だが明らかにそのジャンルの作品と違うのは恋愛物語にダメな大人達の物語が並走している点だろう。
こういったジャンルは2人だけの世界にフォーカスすることで、恋愛の結末が彼らの人生の結末であるかのような言わば狭い世界を大きく見せる構造でできている。対して本作は大人の世界の中で背伸びした少年少女達が戯れる構造になっていて、二人の恋愛の結末はこの物語の結末とイコールではないのだ。それはラストの釈然としない終わりからも汲み取れることで、疲れた表情で歩く大人一行と「釣りでもしてたのかな」と呟きながら遠くから眺める二人。子供にとってその恋愛のくっついたり離れたりは大事だが、そんなのは世界や人生にとってちっぽけなことなのだと相対的に、だが大人を正しいともせずに描いている。
arch

arch