この物語は100％殺人加害者側の立場で語られる。反省するだとかそんな次元ではなく、人の死に直面したときにだけ心が安らぐという壊れた人間の末路が描かれている。実際はそういうときだけではなかったと分かるのだが時既に遅し、壊れていたからこそ出会えた最愛の人というジレンマに陥る。それが一番の肝だろう。そこは原作同様いい筋だと思う。
祖父母、叔母がいない、兄弟がいない、ドッグラン付きの喫茶店からペットOKのレストランへ、原作といくつか異なる点はあるものの大筋で表現したいことは同じ。
役者は吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチと演技できまくっちゃう人ばかりなのでそりゃ芝居見てるだけで感じるものは有りますよ。松坂桃李は原作の人物より少し影響を受けやすい人間の設定。そのせいもあって感情が跳ね上がるシーンはちょっと過剰に感じてしまった。
ところで佐津川愛美はいつ報われるのだろう。そもそも本人が現状を嘆いているかどうかは知らないが、この演技レベルにも関わらずこの知名度の無さはおかしい。バラエティ番組に出させてやれだとかそんな事言うつもりは毛頭ないが、映画で主役をやるのになんの至らなさもないし、むしろ役がハマれば大爆発するぞ。
その大爆発が他の映画で起こっているのが清野菜名。今作では出番は少なく、台詞も殆どないし存在感を示せたかというと厳しいが、能力は間違いない。その話は「パーフェクト・レボリューション」の方で。
あと、清原果耶がチョイ役すぎて残念。まさか仕事選びまくる系の人なんだろうか？もっと沢山の映画に出演していてもいいと思うのだが。
この物語、原作からしてヌルいのだが映画になるとより杜撰さが際立ってしまった。壊れた人間だからといってなぜ超人だと解釈するのか？本当に無茶苦茶だ。その解釈は原作とは異なるので監督および脚本(同一人物)のアイデアなんだが、本当に酷い。アクション映画でもないのにあの人が超人化するシーンを想像してしまったわ。
ところであの重しは発泡スチロールだろうか？
役者に興味がある人は是非是非。映画自体は特筆すべき事はありません。殺人被害者の気持ちがどうしても気になるという人は主人公は貞子や伽椰子と同族だと思って下さい。
