rosechocolat

ターシャ・テューダー 静かな水の物語のrosechocolatのレビュー・感想・評価

3.7
庭って真面目に手入れしようと思ったら、巨額のお金がかかるんです。「うわー、綺麗!!」って一言で済まされてしまうガーデニングを実現させるためには、資金・人手・時間が必要。今や庭いじりは最高の趣味ではないでしょうか…。 と、現実的な考えでは絶対に片付けてはいけないのか本作。約100年もの1人の女性絵本作家の人生と共にあった庭。その関係性を描く。

たぶん人生の最高の贅沢って、「好きなことだけをして生きる」こと。それを実現するためにどうしたらいいか?とか、あくせく考える様子は本作にはない。あくまでも夢に向かって諦めないこと、そのことだけをひたすらやって来た結果がターシャの生涯である。バックグラウンドもあり、また子孫にも恵まれたが故の幸せな晩年だが、そこに至るまでの道のりは平坦ではなかった。平坦な人生を送る人は少ないが、そこで諦めるか諦めないかの違いが、夢を実現できるか否かの分かれ道である。

ターシャが手がけて来たもの、絵本や庭、そして日々の暮らしの様々な手仕事と、世相とを比較することも、この映画を読み解くポイントである。世知辛い日常や現実からは遠く離れたターシャの世界は、荒んだ心の癒しとなった。だがターシャ自身も人生の転機や辛さを、自身の絵本の世界で癒していたようにも見える。時代は流れても、共感するポイントは普遍なのだろう。

「人生は短いんだから、楽しまなくちゃ」
「不幸になってる暇はない」
手を動かし、身体を動かし、ひたすら己の世界を追求する根気は、大いに勉強になる。
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