MikiMickle

ぼくの名前はズッキーニのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ぼくの名前はズッキーニ(2016年製作の映画)
4.0
監督はスイス人のクロード・バラス
原作 ジル・パリス

とある孤児院の子供たちを描いたストップモーションアニメ。

主人公はイカールという9歳の少年。いつも屋根裏で1人絵を描いている。ママと二人暮し。父親が“雌鳥”と家を出ていってから、ママはビール漬けになった。ビールの空き缶を積み上げて遊んでいた時、ママの暴力に恐れをなしたイカールによるある行動により、不慮の事故でママがお空へと……
イカールは、ママに呼ばれていた“ズッキーニ”というあだ名と、スーパーマンであるパパを描いた凧と、ママの残した空き缶を胸に大事に抱き、孤児院へと送られる。

そこで出会った、“誰にも愛されない”いじめっ子ボスのシモンや孤児院の仲間たちや、職員の大人たち。彼を不憫に思う警察官のレイモン。
そして、新たに孤児院にやってきたカミーユという10歳の少女と出会い、恋をする。
そして、カミーユのためにとある計画をたてる……

そんな、ズッキーニの孤児院での日々を描いた映画。

孤児院・虐待という暗くなりがちな設定だけれども、ストップモーションアニメという媒体により、キュートでポップなオブラートに包まれている。
手作り感溢れる背景や街並みや家々や車。そのチープさが楽しくも愛おしく感じる。

そのキュートさの中で感じる、子供ならではの笑いと無邪気さと楽しさ‼
なんて、子供の世界は無垢なんだろうとつくづく思う。
その無垢さと、なかなか際どいユーモラスさ(笑)で、微笑ましくも、ちょっと恥ずかしくなったりする(笑)

が、その反面、子供たちそれぞれに深い深い闇と悲しみを落とした“親”の存在……
その存在の大きさは、してきた仕打ちよりも罪であるのかもしれない。親という存在は、確固たるものである分、厄介でもある。
しかし、子供たちが思うのは、恨みだけではなく…………

この世には親に虐待を受けたり、死別したり、様々な要因によって離れ離れになっている子供たちがいる。
この映画はそれを、あくまで子供目線で描いている。親というものへの気持ちが、胸を刺す……
それは、偽善的でも、上っ面なものでもない。
あくまで、「子供がどう感じているのか」という事が、ぐっと胸を掴む。
切なく、苦しくもなる。

あまり可愛らしいとは言えないクレイ人形たちは、いつの間にか可愛くて仕方がなくなり、それぞれの登場人物を抱きしめたくなる。心から抱きしめたい。
正直、現実の世界はもっともっと過酷で、もっと辛い。しかし、この映画が伝えたい事は、その辛さだけではなく、あくまでリアルな子供目線での世界なのだと思う。だからこそ……胸打たれる。何が子供たちに大切なのかを感じる。

クレイアニメによって描かれるそれを、全ての親が見る事を、切に願う。
そして、どんな子供にも、かつて子供だったどんな大人にも。今、孤独である大人にも。

エンドロールの曲まで、グッとくるものだった。たった60分で感じる、この面白おかしさと、ブラックさと、切なさと、温かさ。 愛おしくて、素晴らしい作品。
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