Siesta

夜は短し歩けよ乙女のSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

相当攻めていてアート映画といっていいのでは セリフにもある通り、ご都合主義はむしろこっちから迎えに行く感じだし、あまりに不思議な一夜の出来事、フィクションラインを振り切ったアニメならではの描写の数々 作為的に膨張された非現実的でファンタジックな時空間を描き出す 時代性も曖昧で、個人的にはどことなく「まんが日本昔ばなし」を思い出した あと、タイトルにある「夜は短し歩けよ乙女」は“命短し恋せよ乙女”と歌われる「ゴンドラの唄」から来ているのは間違いないわけで 実際に「ゴンドラの唄」もチラッと流れる 「ゴンドラの唄」が使われる黒澤明監督の「生きる」と比べると、ピュアでストレートな乙女がヒロインで、主人公が悶々とした孤独を抱えた人物というあたりは少し重なるところもある あと、年老いた哀しみの対比は李白と黒髪の乙女ともいえるような気がする
先斗町での飲み歩き、古本市、学園祭、風邪を引いた人々と場面が転換していく まさしく“屁理屈の乱れ咲き”、変人たちのオンパレード ややセクハラチックというか、バンカラな学生ノリっぽいところは、ノれない人もいるかもしれない
まず、先輩が黒髪の乙女を振り向かせるためのナカメ計画からしてイカれてる 外堀埋めてる屁理屈モードがたまらない 割とここでこの面倒臭さをどう感じるかで好みは分かれてそう 底なしの酒豪の黒髪の乙女は、セクハラ行為にはお友達パンチの鉄拳制裁、謎の詭弁クラブで踊り狂い、狭い世間を瞬く間に掌握し、3階建ての電車という謎の乗り物でやってくる李白というおじいさんと飲み比べに勝利して、謎の絵本ラタタタムのことを思い出して古本市に向かい、今度は学園祭でゲリラ演劇でヒロインのプリンセスダルマを急遽やることとなり、風邪を引いた人々を回っていき、遂に先輩への想いを受け取ってデートにこぎつけるという荒唐無稽というほかないストーリー
学園祭事務局長の突き抜けた管理システムは実写だとめちゃくちゃ寒いだろうなぁとか思うけど、今作だとめちゃくちゃユーモアとして効いてる パンツ総番長と樋口の韋駄天こたつもめちゃくちゃシュールで好き まず、“韋駄天こたつ”っていうフレーズからしてその馬鹿馬鹿しさが愛おしくなる
風邪がうつっていくというところはこの作品が作られた頃から少し時間が経って、ウイルスの感染が人と人の繋がりよ、なんて楽観的過ぎるようにも思えてしまうかもしれない とはいえ、膨張された自由闊達な一夜からのデートというその対比も面白いし、結局どんな話だったか荒唐無稽でめちゃくちゃなのに、軽やかで重荷の取れたようなポジティブなマインドになるのも良い
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