タコさんウィンナー

夜は短し歩けよ乙女のタコさんウィンナーのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
4.2
後輩である黒髪の乙女に恋をしたこじらせ大学生、「先輩」。夜の街をおもちろいことをもとめて渡り歩く黒髪の乙女。彼女を中心に街の人々が動き始める…!
湯浅政明×星野源×アジアンカンフージェネレーション×中村佑介というサブカル殺戮マシーンみたいな映画でした!
アニメーションパワー、キャラクター、ストーリー、デザイン、音楽、演出……どれをとってもとてもおもちろかったです!

四季を通して表現されていた原作の物語を、たった一夜のことに圧縮。はじめは「ちょっとむずくない…? むしろ夜長くなってない?」と思ったものの、後半には「なかなかおしゃれなつっこみかたをしよる(何様)」という印象に変化しました!
それもひとえにこの作品の持つ、不思議な夢感によるものでしょう!

原作の持つ独特のファンタジー感を、見事に表現した今作のアニメーションパワーは圧巻。なんなら「もっとやべえ感じ出してやるぜ!」という気概すら感じます。湯浅監督特有の独特な文字通りの「アニメーション」。歪みや極端なデフォルメが我々を夢の世界へ誘ってくれました。もはやTVシリーズ「四畳半神話大系」から続く、湯浅政明表現の波を受け継いでいます。クライマックスでは「マインドゲーム」のころを想起させるほどのアニメーションの暴力も……!(笑)
途中のアニメーションパワーを使った謎のギャグ表現も笑えました。特にクライマックス直前のクソコラ風表現とか…(笑)

キャラクターはさすが森見登美彦先生。大学生のおもちろい部分を誇張してファンタジーにし、嫌なやつにならないレベルで変なやつをいっぱい出しています。キャラクター以外でもイベントや技の名称等すら秀逸。それぞれに「わかるけどわからない」エピソードがついていてかわいくおもしろいです。(某移動即席演劇とか、お友達パンチとかね!)
中村佑介さんのキャラデザもかわいかったです!樋口師匠のキャラデザが好み…!
声優陣もみんなハマっていてよかったです!星野源のおもしろ声の時の顔が脳裏に浮かんで笑いました…(笑)でも星野源も役にぴったりでよかったと思います!

ずっとわけわかんないようでいて、実はお話としても熱いです。いつも主役に躍り出て人の世界を変えていく黒髪の乙女。それを追い続ける主役のはずが一番影の薄い先輩。その先輩が後半でする決断とは…!とか!
そしてさらにクライマックスあたりで出てくるシーンには「どんな人間でも、生きて活動する限り誰かと繋がっている」というテーマへの返答のようなものが提示されます。それは湯浅監督の「マインドゲーム」で扱われたテーマにも似ているような気がしました…!

人と人があえば、互いに影響を与えあう。だからこそおもちろいものを探すため、夜は短し、歩けよ乙女!

(ちなみに、四畳半神話大系や夜は短しの原作を読んでないと若干説明不足な点(表現・要素共に)はありました。若干初見にはハードル高いかもしれませんが、それでも見ておもしろいとは思います。隣で見てた高校生カップルが「あと2回くらい見ないとちゃんとわかんない」と言っていたので参考までに…笑)