エクストリームマン

メアリと魔女の花のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)
2.0
宮﨑駿が格別好きってわけでもないし、彼のキャラクターデザインが好きってわけでもない(寧ろ苦手)けど、それは一定のレベル以上が保たれていたからこその贅沢みたいなものだったのだなぁとしみじみ。

ポスト宮﨑駿(とかいう世迷言)と称される?監督の作品の中で一番酷かったのは新海誠の『星を追う子ども』だと思ってるけど、本作はアレに匹敵する。細田守のアレさはこの際於く。別問題な気もするし。まぁ、まともな話の筋すらない『星を追う子ども』に比べれば(原作があるのも手伝ってか?)物語めいたものがある分マシと言えなくもないけど、個人的に(能動的に)許し難い点がいくつもあった(『星を追う子ども』は脱力・無気力感って感じ)のと、絵柄が近い分、画作り・デザインレベルの低さが浮き上がって見えて……

話より前に、まずデザインが壊滅的。キャラクターデザイン。主人公のメアリは、まぁ標準ジブリっぽい感じ。違和感はあるけど、薄め。本作の書割ヒロイン(男)ことピーターが特に酷いかな。ニセモノのリンクだよねアレ。ジブリ風リンクというか。ゼルダの伝説のあのリンク。それが赤いキャップを後ろ向きに被ってて、まぁ似合わないのなんの。途中被ってないけど最後また被ってた。クソコラ感。マダム・マンブルチュークとかドクター・デイのデザインも大概にしろって感じだったしね。キャラクターはまぁ元ジブリの寄せ集めだから似たり寄ったりのデザインになることが仕方ないにしても、一番酷かったのは背景かな。舐めてんのかってレベル。特に、魔法学校(エンドア大学)の全景から細部に至るまで、デザインも色彩も本当に酷い。美しくもなく、面白くもなく、振り切れてもいなくて、じゃあ何があるのかというと、ただそれっぽいものを寄せ集めただけ。階段の角度とか、フザケてるのかと思った。ダッサ。あと、あの島の家もガウディの中途半端なパクりみたいでなぁ。最近、たまたまガウディの設計した個人宅内の写真を大量に見る機会があったからより過敏になってたのかな。ガウディの全てを曲線で構成した有機的なデザインは稚拙だけどめちゃくちゃ面白くて魅力あるのに対して、「それっぽい」から取り込んだだけの内装が陳腐に見えて仕方ない。

背景もだけど、とにかく画に、動きに、芝居に魅力がないんだよ。動きで致命的に笑えないし(笑わせようと?してる場面で)引き込まれない。アニメーションなのに、実写で大根役者の芝居見せられてるみたいな変な緊張感味わってしまった。特に序盤。宮﨑駿監督作じゃあり得ないような緊張感のない画面構成も散見されて、監督って大事なんだなと。わかってはいたけど。この、キャラクターが芝居してない問題とセリフで説明しすぎ問題(最悪)は恐らく連動している。宮﨑駿作品だったら、ある状況に直面したキャラクターはコンマ2で察して、目線とか表情でそれが表現されつつ、場面の勢いを殺さないままアクション(必ずしもダイナミックなものじゃない)が展開されていく。まぁコンマ2で察するかどうかは場合に依るとしても、「あ、猫の色が変わった」みたいなセリフが頻繁に出て来る時点で愕然とするのは確か。仮に原作にあったとしても(知らんけど)消せよ。画面で見えてるんだからいらないだろと。これは宮﨑駿とかジブリと比較して云々というより、それ以前の問題だよね。

モチーフとかメタファが全く上手く機能してないのも気になった。原作からの問題引き継いでるのかな。結局メアリが前に出たがるのは「そういう娘だから」ってことで終わりなの?その背景は?両親との関係とか、過去の失敗とか、なんかないのか。赤い館の庭でうっかり手折った花の話も結局後で利いてくるわけでもなく。なんか最後に取り敢えずリボン結んであったけど。魔女になれる花〈夜間飛行〉も結局何が凄くて何が問題なのかが呈示されないから、それを奪い合ったり「わたしにはもう必要ない」って言って投げ捨てたりされても、何も思わない。ファンタジーだからって必要な説明まで省いていいわけじゃないぞ。舐めてるのか。『指輪物語』の指輪がどうして作られて、何ができて、なんで危なくて、誰に狙われてるか説明されてないようなもんだぞあれじゃ。動物実験はなんか可哀想だから酷いですとか、そういうレベルの説明しかない。つか、あの島の家に実験ノートあったってことは、ほとんど最後の段階まで種盗んだアイツも実験に協力してたってことなんじゃないの?寧ろ、アイツが発案してそのアイディアをドクターが盗んだと邪推するが。そして、普通の人(この区分けも作中で曖昧)を魔法使いにする実験がどういうことをしようとしていて何が危険なのか、何故過去は失敗し、かつ今回も失敗したのかが語られないから、手の施しようがないとい。とにかく枠組みとかルール説明がなくて、かつそういう諸々を吹き飛ばすような映画的なマジックもなくて、ただ辛い。そういえば、クライマックスの実験場面と原発事故(メルトスルー)を露骨に重ね合わせてるところとかも、『魔法科高校の劣等生』じゃないんだから(同レベル)勘弁してくれという直裁さだったなぁ。魔法使いの魔法が作中の普通の人々の何に当たるのかが示されない中であんなもの出されたところで。上手く織り込めよ。主張は隠して静かに浸透させろ。そもそも作中に登場する魔法がどれ1つとして面白くもなければワクワクもしないところも問題な気がする。想像力が貧困とか、そういうこと言いたくないけど、疑いたくはなるよね。

メアリとピーターの関係があまりに薄い。メアリにとってのピーターって初対面で猿呼ばわりしてきた以外の情報ないけど、なんか約束したから助けに戻るとか、メアリは聖人君子でお人好しなのか。バカなのか。罪悪感から戻ったってことなんだろうけど、それでも初対面で自分のこと猿呼ばわりしてきたよく知らないやつだぞ?ピーターにしても魔法にしても、とにかくメアリ(の動機)となんらかの意味で重なるところがないから、諸々の流れが全部納得できないんだよなー。納得できないといえば、解放した動物の挙動もまるで納得できないけど。知能が異常発達しているのだろうか。

完全な余談。声の話。メアリ役の杉咲花は声と芝居があまりにも悠木碧だったなと。そして神木隆之介は神木隆之介役しかできないのだなと。佐藤二朗は普通に喋れよ。お前は面白くない。