ノラネコの呑んで観るシネマ

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.4
むっちゃ面白い。
例の事件に至るトーニャ・ハーディングの半生をインタビューと再現ドラマで構成してるのだが、インタビュー含めて役者が演じ直して世界観統一してるのがユニーク。
彼女の悲劇は周りに極端な人しかおらず、よりにもよって大バカ者と結婚しちゃったこと。
彼女自身もおバカではあるのだが、それも母親によってスケートしか知らないスケートバカに育てられた故。
今もそうだけど、フィギュアスケートは元々金持ちのスポーツ。
当時のライバルのクリスティ・ヤマグチやナンシー・ケリガンは、それぞれ裕福な家のお嬢さん。
対してハーディングは田舎の母子家庭、プアホワイトの出で、当時からその出自が揶揄されることが多かった。
彼女には才能に群がる人はいても、広い世界を見せてくれる人はいなかったんだな。
バカの周りにはバカしかおらず、環境が負のスパイラルを呼び込む最悪の展開。
ここにあるのは、アメリカン・ドリームの理想とは対照的な、米国社会の格差固定の残酷さが見える転落のストーリー。
スポーツ史に残る強烈な事件だったが、映画を観ながら当時の記憶が呼び覚まされてより面白かった。
全く知らない若い人は、少し予習していった方が良いだろう。