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バリーのatsukiのレビュー・感想・評価

バリー(2016年製作の映画)
3.9
【悩み、葛藤する事こそ人生】

第44代アメリカ大統領バラクオバマの青春時代を描く。若き日のバラクオバマは進学の為ニューヨークへ。世界一刺激的な街で人種、文化、そして自分が何者かを見つめ出していく…

正直、今を生きる人なら知らない人はいない人物の1人ではないだろうか?大統領選で新しい大統領も決まり、来年の1月20日になれば任期終了となる今この時期に、彼が大統領になる前の青春時代をいかに過ごしたのか知れる作品となっている。

「国際外交、及び、諸民族間における協力強化の為、並外れた努力を払い、世界中の人々に、良き将来への希望を与えた」との理由でノーベル賞を獲得したバラクオバマ(以下バリー)である。それは誰もが知ってる事であって、そんな中で面白いのは世界の為に働いてきた功績を知っているから、今作で見せられる序盤のホームレスと変わらない状況や住んでいるところの酷い有様、今では考えられない様な悩みや葛藤の対比が素晴らしい。

しかし、誰しも最初から大統領ではない。人は成長していく過程で悩み、葛藤する事で自分自身、つまりアイデンティティを構築していく。刺激的過ぎる街ニューヨークでバリーの居場所は存在しないのだ。それはまだ人種差別が残っていたり、誰も彼を歓迎しようとしない。それはバリーだけではなく、ニューヨークに生きる全ての人が悩み、葛藤し、アイデンティティを模索しているからである。

そんな中で出会う白人の女性シャーロットと黒人の男性PJ。シャーロットとは恋人に、PJとは親友に。そして幼馴染?のウィル。ここで面白いのはバリーの頭の片隅には「人種差別問題」というのがあるらしく、シャーロットと深い関係になったとしても彼女に悩み、葛藤する。一方でPJとウィルは居場所がなく、なかなか馴染めないニューヨークの中でも唯一自分らしく生きれる世界。同等のタイミングで知り合ったとしても、差が生まれてしまうなんとも言えない空気というか雰囲気を上手く描いている。

バリーはシャーロットと触れ合う事で自分自身何者なのかを知る。自分がアメリカ人である事の意味。自分が黒人である事の意味。それは我々が何故日本人なのかにも通ずるところだ。当たり前の事を何故そうなのか?と疑問に持つ事こそがやはり国をまとめるトップに値する存在なのかなと知らしめられる。当たり前の事を当たり前と思う「思い込み」から生まれる「理解されない」という苦痛。ニューヨークで描く映像には痛々しさも感じる。

兎にも角にも「葛藤し、悩み続けながらもただ進む、それが人生だ」
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