Yoshishun

エクスペンダブルズ ニューブラッドのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

“いくら最強無敵でも老いには勝てない”

今年の映画初め(劇場鑑賞)は、約10年ぶりに復活した最強無敵の消耗品軍団!試写組の微妙過ぎる反応を経ての公開となったが、昨年夏に公開済のアメリカでは大コケと国内外共に何やら雲行きの怪しい興行となっている。スコット・ウォー監督によれば本作がシリーズ最終章になるとのことだが、果たして有終の美を飾れるのか、2作目以降は劇場鑑賞している思い入れ深いシリーズの最新作をようやく鑑賞した(1作目は公開当時15歳未満)。

事前に告知されていた新規キャストと予告編からも、どこか華のなさが目立っていた本作。その不安は的中する結果となってしまったが、2作目以降オールスター感謝祭的ファンムービーと化していたことを思うと、ある種の原点回帰ともいえる。

観客は、『エクスペンダブルズ』というシリーズに何を求めているのか?
それによって本作への評価は大きく左右される。

まず、オールアクションスター大集合映画としてはどうか。
結論から言えば、シリーズ史上最も地味である。
ジェイソン・ステイサムもシルヴェスター・スタローンという2大巨頭を前面に押し出しながら、脇を固める消耗品たちは揃いも揃って過去作のビッグネームに劣ってしまう。ミーガン・フォックスも『トランスフォーマー』の時のセクシーさや可愛さが薄れ、50セントも前作までの黒人枠テリー・クルーズやウェズリー・スナイプスと比べるとインパクトに欠ける。極めつけは、ジェイコブ・スキピオ演じる前作のお喋りマシーンであるガルゴの息子ガラン。父親譲り、むしろ父親以上のマシンガントークながら、差別化を図るためか必要以上にエグい下ネタを繰り出し、「バーニーはヒーロー」と謳いながらも、彼を敬う描写に乏しすぎるので台詞に説得力がない。
更に言うとトニー・ジャーとイコ・ウワイスの活躍も少ない。特にイコ・ウワイスは、せっかくのシラットという高速武術で度肝を抜くことも出来ただろうに、リーとの一騎打ちで一瞬見せる程度。敵の幹部というポジションながらもあまりに扱いが酷い。ハリウッドは彼等アジアンスターをもっとフル活用すべきだ。昨年の『ジョン・ウィック コンセクエンス』でのドニー・イェンを知っているだけに余計にそう思う。
やはり、シュワルツェネッガー、ウィリス、ローク、ノリス、バンデラス、フォード、そしてジェット・リーらが不在となったのはかなりの痛手である。それと同時に、往年のアクションスターを大復活させる『エクスペンダブルズ』というシリーズ存続の難しさをも痛感させることとなった。

次に、傭兵アクション映画として。
2作目は出演するアクションスターの自虐ネタ満載でコメディ色が強くなり、3作目は老若男女活躍させようとしてそれぞれの見せ場が大分短くなってしまった。それに対し本作は、1作目でかろうじてあった昔懐かしB級傭兵アクション映画らしさはかなり感じた。あまりに展開が読め過ぎるお粗末な脚本も御愛嬌、筋肉と銃火器と爆発と絆さえあれば何でも出来るのだ!黒幕お前しかいないやん?とか、まあ生きてるでしょうね、とかそんな野暮なツッコミは本作には無意味なのだ。シリーズ最大の悲劇となるリビアでのカーチェイスや、ロシア領海内での船上戦が楽しければいい。突然のナイフ使い同士の共闘が熱ければいい。ただエクスペンダブルズというチーム戦というより、ほぼステイサム無双だったのが惜しい。

最後にスタローンとステイサムのブロマンスものとしてはどうか。
これは本作についてもほぼ満点の出来であり、バーニーの搭乗するHU-16が墜落していくのを苦悶の表情で追い掛け救えなかったことで黄昏れる姿は最早恋人の領域。本物の恋人ジーナと喧嘩別れしていたのに復縁よりも、バーニーの指輪を取り戻すことを優先させてしまうのも可愛げがある。指相撲で負けたから取られたという不毛というかお馬鹿すぎる理由なのに、健気に兄貴分には尽くすのだから。

観る側の各々がこのシリーズに求めているもので評価は変わる。そのため試写組が微妙過ぎる反応を見せたのも頷ける。バーニー隊長が冒頭でフェードアウトするし、チーム戦というよりステイサム単独戦がメインになっているし、そもそも新キャラにあまり魅力がないので過去のビッグネームからは明らかに劣る。また細かいところで言えば、始まってすぐ、イコ・ウワイス演じるラフマトのリビア襲撃とエクスペンダブルズ集結がかわりばんこに映されるという謎の編集が酷い。

ただ本作については、1点シリーズではあまり描かれてこなかったものがある。
それは「老い」である。
3作目の前半でも描かれてはいたが、本作の方がより顕著となる。バーニー、というよりスタローンがほぼ戦線離脱状態、オリジナルメンバーのガンナーは序盤でラフマトをスナイプできずに殺り損ねたり断酒で禁断症状に陥っている。トールは残尿感が残ってるのか小便の締まりも悪く、クライマックスでは1人負傷してしまう。本作から登場のトニー・ジャー演じるデーシャも、かつてはバーニーも最強と認めながらも、戦闘狂として暴れ回った過去を捨てている(まああっさりカムバックしたが)。幾ら最強無敵の傭兵軍団も老いには勝てない。
だからこそ、まだ現役バリバリのステイサムへと世代交代を促したのだろう。もっと若手メンバーを活躍させていればスマートに世代交代ができたが、本作がステイサム主演となっているのもシリーズの今後のためといえる。スタローン自身も『ロッキー』『ランボー』、そして本シリーズから身を引くことを宣言している。今後はバーニーもロッキーのようにサポート役に徹するか、はたまた死んだ扱いされるのか。それは5作目が作られるまでわからない。

現時点では本作で完結とのことだが、それではあまりに勿体無い。こんな地味なメンツでシリーズに終止符が打たれてしまうのは残念だが、せめてスタローンも念願の女性版エクスペぐらいは実現させてほしい。願わくば豪華キャスト×R指定版本家エクスペも復活することを祈る。これで終わるのだけは本当に勘弁してくれ。
Yoshishun

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