カカオ

三度目の殺人のカカオのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.6
今更ながら初鑑賞。

30年前に殺人の前科がある男が、再び殺人事件で逮捕された。犯行も認めている。圧倒的不利な状況の裁判を任せられた弁護士の物語。












以下、ネタバレあり。







福山雅治、ここんとこ出演している作品を観る機会が続いた。ズル過ぎる才能。役者としても、音楽家としても素晴らしい。

広瀬すず、配役の位置付けを理解し、役そのものになりきっている。素晴らしい女優だ。今後も楽しみ。

役所広司、素晴らしい役者であり、どのような役柄にも変化の対応が可能なオールマイティな素晴らしい役者だ。

市川実日子、なるべく感情を出さない辛辣な表現が観ている側への心に突き刺さる。存在感があって良い。






さて、本題。
本作品の鑑賞直後、なんかモヤモヤした感じですスッキリしない。真相がよくわからないまま死刑判決。


おそらく、広瀬すずが真相を語っているのではないか。役所広司が裁判の混乱を狙って、広瀬すずへの辛い証言を避けさせる狙いについても、的を得ていると想像する。


それはそうとして、
裁判に携わる方々は、それぞれの立場や事情があって、自分の都合の良い展開を望んでいる。裁判は量刑を争うゲームであり、真相がどうなのかは大切ではない現実を訴えたいメッセージは伝わった。うん、そのメッセージは理解できた。




よくわからなかったのがタイトルの「三度目の殺人」。本件は2回目の殺人事件であり、3回目ではない。ちゃんと観ていたが、これがわからなかった。





後に、多くの考察の書き込みを読んで納得。

三度目というのはそういうことなのかと。
そして、どうやらモヤモヤさせる結末も監督の狙い通りのようだった。




私はモヤモヤする思いから、いろいろ調べて本作品の投げ掛けたい思いを理解しようとした。その私の一連の行動が、監督が意図してモヤモヤさせる仕掛けであり、その深く考えさせる行動そのものが本当の狙いだと知って"青天の霹靂"というべきか、強い衝撃を感じた。



見終えた直後は、モヤモヤした感じが勝っており、作品としての面白さは微妙だなというのが正直な感想だったが、深く理解しようとして気付く重大なメッセージ。これは自分だけでは理解できなかった。この難解さの表現方法の戦略は、一つの賭けだったのではないか。私のように理解力に乏しい者もいるはずなのに、、、



いろいろ調べて、見終えた直後と印象が変化してしまった。社会的問題を間接的に考えさせる素晴らしい表現方法である作品だ。



ただ単に、死刑廃止論を投げかけるよりも、深く考えて欲しいメッセージ性の強い作品で衝撃を与える作戦。デリケートである死刑の是非問題。死刑反対だと思っても反対側の意見を固執して押し付けるものでもない。


タイトルとなっている第3の殺人というのは、判決となっている死刑を「殺人」として表現していること。そのことを考えさせるための仕掛けとなっているタイトル。恐れ入りました。
カカオ

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