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ブルーハーツが聴こえるのundoのレビュー・感想・評価

ブルーハーツが聴こえる(2016年製作の映画)
3.6
僕や君や彼らのために。

ブルーハーツの楽曲をテーマに作られた6つのオムニバス。かなりの豪華キャスト。

最近は深夜まで脳がビジネスモードになっていることが多いので、レビューは少しサボってますが、ちょこちょこ映画館には行ってます。

今年は映画館で邦画をたくさん観ようと思っていたのに、フタを開けてみたら圧倒的に洋画の方が多くなってしまっていて(ここまで、洋画30:邦画8)、もっと邦画が観たいよ〜と思っていたところにこの作品。ブルーハーツはそこそこ世代(どちらかというと私の姉世代)で好きなので鑑賞しました。
邦画はやはり洋画の2倍くらいレビューが書きやすいです。
せっかくのオムニバスというか競作なので、別々にスコアをつけてみました。


1.「ハンマー(48億のブルース)」
飯塚健監督 スコア3.6

♪ハンマーが降り下ろされる 僕達の頭の上に
ハンマーが降り下ろされる 世界中至るところで

パンクですねえ。
コメディ仕立ての成長物語と言えなくもない。
場末の木工所のようなところで働く尾野真千子が、劇団員の彼氏の浮気を目撃してしまい、だけど直接怒りをぶつけることもできずに悶々とする。果たして、怒りの鉄槌は降り下ろされるのか?

漫才みたいなテンポの良いやりとりが個性的。
仮装した時(特にマント付きの場合)に変な歩き方になってしまうのは理解できる、というかそこが秀逸だった。

2.「人にやさしく」
下山天監督。スコア3.0

アクション多めのSFと言えなくもない。
邦画が苦手でハリウッド好きな人は、恐らくこういう作品が好きではないんだろうな、と想像してしまう。アクションシーンは頑張っているけれど、迫力不足な感は否めない。

SFとしても色々ツッコミどころが多そう。
そして、何よりも豪華キャストなのになんか盛り上がらない。市原隼人は役に恵まれていないと思っていたんだけど、もしかして本人に華がない?
それでも、「人にやさしく」の曲からこういう作品を着想してしまうセンスは面白い。

3.「ラブレター」

井口昇監督。スコア3.7

おふざけ色の強い、しかし、甘酸っぱい青春映画と言えなくもない。

斎藤工ファンはこの役いいんでしょうか(笑)
中学時代は映画マニアの冴えない少年だった斎藤工が、大人になってから、なぜか便器に吸いこまれ、中学時代にタイムスリップするお話。
彼は、どうしても過去に戻ってやらなくてはいけないことがあった…。

途中までは苦笑せずにはいられない展開や演出なのに、クライマックス、まさに「ラブレター」がかかる場面は最高。せつない気持ちにならずにはいられない。
打算も何もない、ただただ純粋な気持ちひとつで生きていた季節。
はい、監督の狙い通りにやられました。

4.「少年の詩」
清水崇監督。スコア3.7

どうしても『呪怨』のイメージが強い清水監督。こんな良い感じにドラマ映画が撮れるなんて。
ストーリーは目新しくないけど、子役の子が良い。新井浩文も安定している。優香も母親役が似合うようになった。

不良というほどではないんだけど、反抗したい少年が持つ尖った雰囲気が良く出ていた。
そして、ほっこりするラストも良い。
テレビで流れる昔のCMが懐かしい。

5.「ジョウネツノバラ」
工藤伸一監督。スコア3.7

これだけなぜか曲名とタイトルの表記が一致しないのだけど、「情熱の薔薇」ですね。
個人的には、なんだかんだでブルーハーツの中で一番好きな曲です。

耽美と言えなくもない映像作品。
主演・脚本は永瀬正敏。しかし、これは脚本と言って良いのかどうか…。
これもツッコミどころは多いのだけど、なんとなく説得力を感じさせるところがすごい。ああ、主人公は結局これをしたかったのね、ということが最後に理解できるのだけど、映像美と、そこで流れる「情熱の薔薇」の力で、強引に感じさせる名作感。

この曲がもつ本来のテーマと、この作品のテーマは一致していないような気が物凄くするけど、これはこれでアリだよなあと感じさせてくれる。映画は奥が深い。

6.「1001のバイオリン」
李相日監督。スコア3.9

「1000のバイオリン」じゃなくて「1001のバイオリン」の方みたいです。私は「1000の〜」の方がロックロックしてて好きですが。
やはり頭ひとつ抜けてる感じの李相日。
原発の社会問題を取り込みながらも、前向きに落としてくるところが良いです。この人はホントにストレート。


総じて、各作品の作家性みたいなものが感じられて面白かったです。
そして何よりも、どんなシーンでも、5割増しくらいにしてしまう程の力を持ったブルーハーツの楽曲のパワーを改めて感じた次第。
現在でもCMなどで多数使われる、その威力をまざまざと見せつけられた思い。

歌にも映画にも、心を豊かにしてくれるパワーがある。ブルーハーツの新曲は、もう聴くことができないかもしれないけど、彼らのスピリットを、人生を乗り切る力にしたい。明日には笑えるように。
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