生姜異物強壮

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーの生姜異物強壮のレビュー・感想・評価

3.9
これ、40歳前の若い人たちが観ても全然イメージ沸かないと思う^^;が、懐かしい「コダクロームのスライドマウント」サイズにカットされた画枠(フレーム)の中で綴られる映画だ。

まさにスライド・プロジェクター的な"断片カット"で(何十年、何百年という)年月を切り取ってゆく…ってな、なかなか渋い趣向。昭和オタク世代には、これだけで5点満点中の7割を奢ってあげたい気分になるw

さてさて、以下↓自分の勝手な解釈だが……


〇 ストーリー中盤に登場の酩酊オヤジがブチ上げる《人はなぜ 生きるか》の講釈が結構、この作品の核心をなぞってる気がする。

〇 おっさんの推論では、人は『①誰かが伝えようと想いを込め遺した《何か》を受け取り、②誰かに伝えようと想いを込め《何か》を遺した』ことで人生の目的が達成され、そのあと身体は原子レベルまで分解され、次なる《存在》へと転化を遂げる。ぶっちゃけ死んじまって、成仏し(=天に召され?)輪廻転生するんですな。

〇 しかるに、この映画の主人公「C君」は根っからの芸術家肌で、自らの感性の内側で沸き起こる音楽は(次世代へ)遺しまくってるものの、外界の誰か他人が(この世に)伝えようと想いを込め遺したメッセージを、何ひとつ真面目に受け取った試しがない。

〇 それゆえC君、人間失格。身体は死んだのに精神は(成仏できず)幽霊として現世に置き去りにされてしまうのである。

〇 ネタバレになるので これ以上の委細は省くが、結局「幽霊になったC君」は、自分がいかに(かつて愛した?)女性の言うことすら(胸の奥底では)まともに聞かない、わがままで自分勝手な「嫌なやつ」であったかを見せつけらせ、生前の落ち度を痛感する。

〇 いみじくも「自分が生まれてきた」ことの最低限の使命は果たし終え、この「幽霊という拷問のような日々」を卒業するには、誰かの遺した何らかのメッセージを(今度こそ本当に!邪心もエゴも廃して)真っすぐに読み取ること以外には無いのである。


……って ことなんだろな。

だから本作を観たあと「ところで、アレに何が書かれてたの??」と不審げにコメント垂れる人もいるだろうが、文面の内容なんか「ある意味、どーでもいいんだ^^;」と思うワケ。自分としちゃ。


もひとつ最後に──。観た後の余韻は、日本の絵本『100万回生きたねこ』の読後感に近い。あれ読んで泣けた人なら、ハマるかもだよ♪♪