ブタブタ

イット・カムズ・アット・ナイトのブタブタのレビュー・感想・評価

4.0
劇中登場する2枚の絵画何れもブリューゲルで『雪中の狩人』と『死の勝利』
前者は今世界に広がるヘイト、排他主義、移民や異教徒に対する差別や、人種が違うと言う事だけでテロリストと決め付け無抵抗の相手を暴力を加えたり殺害にまで及ぶ。
二つの家族の結末を表してて、後者はそのままペストやコレラが猛威を振るう中世の世界が現代にも訪れた事を。
『デビルマン』の雷沼教授の台詞「悪魔の正体は人間だ!」がその言葉通りの意味を持つ世界なのだと思う。
ちょっと違うのは恐らくは細菌・ウィルスレベルで「悪魔」に相当する未知の生命体みたいな物は確かに存在してて、それが人間の精神に寄生して人類を滅亡に至らせてる(だと思う)
カタツムリに寄生してデメキンみたいにして自分から鳥に食われる様に操って増殖・拡散する恐ろしい寄生虫がいるんですけど、アレみたいに人間の精神に寄生して自ら周りを巻き込んで「死に至る病」を蔓延させる様な、ソレは外から来たのか人間の精神の中から生まれたのかは定かではないけど、人間の精神を操りある程度の所で肉体にも侵食(黒いボコボコ)そして増殖と拡散を繰り返しているのだと思う。
あの「赤い扉」を開けたのはトラヴィスで犬を殺したのもトラヴィス。
自分はそう思った。
森の中に鎮座する「家」のデザインの歪さ。
シンメトリーの構図と全編を支配する緊張感。
でもやっぱり見せ場がないと言うか起・承・転転転転で終わっちゃった感じ。
ヒット作を連発するA24作品では、本国では酷評らしくレビューもガッカリ感想が多いですけどそれも仕方なしな気もします。
ジャケットに「初期カーペンターやダニー・ボイルを思わせる~」と書かれてたんですけど、自分は初期クローネンバーグ作品、細菌やウィルス、精神の変容や奇形化がやがて世界の終末へと繋がっていく様な、そんな作品に見えました。
ブタブタ

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