千年女優

ハウス・ジャック・ビルトの千年女優のレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.5
強迫性障害に苛まれるワシントン州暮らしの建築家志望の男で、田舎道を走っているところで遭遇した女性を彼女の挑発的な言動に怒って衝動的に殺害してしまったジャック。それをきっかけに恐るべき使命感を抱いた彼が、次々殺人へ手に染めてかねてより希望していた自分が理想とする「家」の建設に取り掛かる様を描いたホラー映画です。

パルム・ドール受賞で世界的に名を広めるもその作家性の強い作風で作品毎に激しい議論を巻き起こすラース・フォン・トリアーが、自身の鬱病疾患をきっかけに製作した「鬱三部作」の後に五年ぶりに発表した2018年公開の作品で、マット・ディロン演じるシリアルキラーによる非道な行いが相も変わらず物議を醸して賛否両論を集めました。

多様性叫ばれる時代に、それでは果たして「個性」とはどこまでが許されるのか、はたまたその「個性」が許されぬときその人間は社会で生きようがあるのか、を残虐非道な行為を通じて問います。屁理屈にも近い極論で露悪が過ぎていますが、下世話になりそうな所を流石の演出力とディロンの存在感でアートホラーにとどめている一作です。
千年女優

千年女優