トムヤムクン

Black Girl(英題)のトムヤムクンのネタバレレビュー・内容・結末

Black Girl(英題)(1966年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

すでにリュミエール兄弟の時代には、映画をアフリカやアジアの植民地に持ち込んで現地住民の生活を博物学的な好奇心と共に見つめる植民地主義的な美意識が植民地帝国フランスの映画にはありました。そうした事情を考えるなら、この作品を持ってアフリカの映画監督が自分達の声をスクリーン上で表明し始めたことは非常に画期的なこと。そうしたアフリカ映画史的な重要性もさることながら、フェミニズム映画としても今日でも極めて重要な問題を提示しています。海外植民地の消失と共にアメリカナイズされてバリバリの消費社会になっていった戦後のフランスにおいて、家庭を保つ主婦は家事労働に忙殺されて疎外感をもろにその身に引き受け、結果として狂ってしまう…。シャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン』はまさにそうした主婦の姿を描いていますが、本作の悪玉である白人中年主婦の奥様は面倒な家事労働を黒人女中のディエナに押しつける形で、家事労働の倦怠と狂気から逃れてみせます。ディエナの苦悩は暴発を見せることなく黙したまま、彼女が絶え間なく磨いて清潔にしていた湯舟についに入ることができるのは彼女が死ぬ時…。
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