トムヤムクン

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のトムヤムクンのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

血まみれの墓場に佇む長身白髪の男と鋭い目つきの黒髪の男,そして鬼太郎を捉えた凄惨なポスターに加えて,市川崑,横溝正史的な閉鎖的共同体を舞台としているという事前情報でおおよそのエグさは予想できたがここまでとはね。戦地のトラウマ的地獄を経験した後,社会でのしあがり強くなることを信条としていた水木は,ゲゲ郎との出会いで変わっていく。人間に絶滅寸前まで追い込まれた幽霊族のゲゲ郎には人間を憎む正当な理由があるはずだが,愚かしくもあり気高くもある人間の矛盾した様態を包み込むように愛した岩子の姿が,ゲゲ郎の考えをあらためさせる。妖怪という,日本の土俗的想像力にとっては昔ながらのお馴染みの存在を通じて人間の愚かさと気高さを見つめようとするゲゲゲの鬼太郎シリーズの精髄は本作でも健在だ。他者の血を啜り食い物にしながら永遠の命を生きようと目論んだ時貞に象徴化された男根社会の永続戦争体制を「つまんねぇなぁ!」とブチ割った水木。思い出せない記憶と確かな悲しみ。
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