ナガエ

あさひなぐのナガエのレビュー・感想・評価

あさひなぐ(2017年製作の映画)
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二ツ坂高校に入学した東島旭は、初登校の日にそうとは知らず、なぎなた部のエースで2年の宮路真春と遭遇した。その後の入部説明会でなぎなた部の演技を見たことがきっかけで、中学では美術部だった旭はなぎなた部に入部することになった。一緒に入部したのは、剣道経験者で言葉のキツイ八十村将子と、裕福な家庭のお嬢様である紺野さくらの三人。皆、なぎなた初心者である。
そしてやってくるインターハイ。この大会で、3年生が卒業する。3年生の一人を押しのけるようにしてメンバーに加わった真春だったが、一年のエース・一堂寧々のいる國陵高校に敗れてしまう。落ち込むメンバーを鼓舞するように、旭は、「一堂なんか私が倒してやる」と宣言、一堂に聞かれてしまう。
そこからは、野上えりを部長として、大倉文乃を含めた6人で練習を重ねる。
なぎなたのルールさえ覚えようとしないチャラい顧問が、夏合宿の場所を見つけてきた。バーベキューだのラフティングだのとメンバーを乗せようとする顧問だったが、しかしそれは、鬼のような指導者がいる尼寺での地獄の特訓のスタートだった…。
というような話です。

僕は、「あさひなぐ」の原作を読んだことがなく、かつ乃木坂46ファン、という立ち位置です。そんな僕的には、かなり好きな映画でした。

物語的には、超王道のスポ根という感じです。なぎなたド素人の旭がいて強くなるんだろうと予感させる。同じ部にべらぼうに強い真春がいて、旭を始め多くのメンバーに影響を与えていく。別の高校には、一堂という、いずれ倒さなければならないライバルがいる…。そういう、お約束的な設定が非常に多いので、だからこそ安心して物語から脱線する部分を楽しむことが出来る、と思います。

恐らく原作の雰囲気を踏襲しているんでしょうけど、この映画はギャグとかコメデイっぽい要素もあります。ここでこうなるんだろうなぁ、という展開を、意図的にぶち壊していく。そのための重要なキャラクターが、なぎなた部顧問の小林先生で、彼の登場は物語的には非常に邪魔なんだけど、真面目に進みすぎてしまいがちな物語を意図的に緩める役割としてはなかなか重要だなと思いました。




そういう意味で言えば、旭も場の空気を外していく感じのキャラクターです。中村先生の場合は、最初からチャラいというか、真面目さを打ち出そうともしない人物ですけど、旭の場合は、真面目にやっているんだけどどうも外れてしまう、というところが面白いですね。

全体的には凄く真面目になぎなたをやっているんだけど、小林先生や旭の振る舞いによってゆるっとした感じも出てて、楽しく見れる映画に仕上がっています。

僕は原作は読んでないのだけど、原作を読んだ人の話では、物語はスポ根だけど、内面描写とか感情の切り取り方が凄く上手い、と言っていました。映画ではやはり、どうしてもそこまでの雰囲気を出すのは難しかっただろう、という感じはします。とりあえず僕は、この映画を見て、原作を読んでみたくなりました。映画の中で好きな台詞は結構あるんですけど、大体、鬼のような修行を課した尼寺の坊主・寿慶のものなので、とりあえずここでは書かなくてもいいかな、と。

物語的に触れる部分は、正直これ以上はあまりないかな。それは、悪い、という意味ではなくて、超王道のスポ根、というのでおおよその説明が終わっているだろう、と思うからです。誰でも安心して見れるタイプの映画だと思います。

で、ここからは乃木坂46ファンとしてどう感じたかを書きます。

僕は映画を見ながら、割と早い段階から泣いてたんですよね。ストーリー的には正直、泣くようなところあった?みたいなところから、なんだか泣いてました。映画を見ながら、自分がなんで泣いてるんだろうなぁ、なんて思ってたんですけど、やっぱりそれは、これが乃木坂46の映画だからだろうなぁ、と思いました。

なんとなく、「あぁ、乃木坂46の子たちが頑張ってるなぁ」みたいな、そういう目線で見てたんだろうな、という気がします。恐らく、乃木坂46以外の人たちが主演であれば、泣いてないんじゃないかな、という感じがしました。自分でもなかなか不思議な感覚ですけど。

特に、これは昔から思っていることですけど、やっぱり西野七瀬は感情に訴えてくる表情をするなぁ、と思います。台詞がなくても、感情をそこまで表情に乗せていなくても、西野七瀬をただ見ているだけでなんとなく感情を揺さぶられる。こういう感覚を僕は、乃木坂46のメンバーに限らず、他の誰からも感じたことがありません。西野七瀬は不思議な存在だなぁ、と思います。

特に今回の映画では、「東島旭」と「西野七瀬」というのは、キャラクターとして近いものがあると思うんですね。「あさひなぐ」に関する西野七瀬のインタビューなどを読んでいると、西野七瀬自身もそう感じているところがあったようです(ただ、監督からはよく、「そんなに暗くはない」と言われていたようですけど)。だからこそ余計に、西野七瀬の「儚い」部分が「旭」にも乗り移って、「旭」を見ているとなんだか切ないような気持ちになるんだろうなと思いました。




原作を読んでいないので原作との比較は出来ないけど、西野七瀬・白石麻衣・松村沙友理の三人の配役はピッタリだった感じがします。西野七瀬の儚い感じ、白石麻衣の凛とした感じ、松村沙友理のホワホワとした感じは、それぞれ実に合っていると感じました。インタビューで松村沙友理が、原作を読んだ時、紺野さくらはまさに自分だと思った、というような発言をしていたので、あの感じは原作通りなんだろうな、という感じがします。

あと、これも事前情報として知っていましたけど、なぎなたの試合などはすべて、役者本人が実際にやっているんだそうです。防具をつけているから別の人にやってもらうことも出来るのに、そうしなかったとのこと。どんな風に撮っていたのか分からないけど、ちゃんと経験者による試合運びっぽく映っていたので、かなり頑張ったんだろうな、と思いました。

乃木坂ファンじゃなくても原作ファンじゃなくても十分楽しめる映画だと思います。
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