マヒロ

この世に私の居場所なんてないのマヒロのレビュー・感想・評価

4.5
ジェレミー・ソルニエ監督の『ブルーリベンジ』で主演、『グリーンルーム』で印象的なチンピラの下っ端を演じていたおっさん、メーコン・ブレアの初監督作品(本人もちょい役で出演)。

看護の仕事をしているルースは、人生のどん底にいる…というわけでもないが、患者のお婆さんの小言を浴びせられたり、好きな小説のネタバレをされたり、注意看板を立てても家の前に犬の糞をされ続けたりと、とにかく細かいイライラが積み重なって満たされない生活を送っている中年女性。
演じるメラニー・リンスキーの絶妙に無愛想でぽっちゃりした佇まいがなんとも哀愁漂う。

そんなルースが、ある日空き巣に入られたうえ、警察もまともに取り合ってくれなかったことから、何かが吹っ切れたかのように動き始め、その過程でご近所さんの変人(イライジャ・ウッド)と共に行動することになるんだけど、ここで何となく大好きな『スーパー!』を思い出した。
もちろんこちらには触手もコスチュームもないけど、周りに馴染めず燻っている中年と、何故かそんな主人公を慕って来る若者という構図は、性別こそ逆ではあるもののよく似ている。
終盤には思わぬバイオレンスが待ち受けているのも『スーパー!』的だけど、ここはどちらかというと監督が出演した前述の2作品にトーンが近い。グロもそうだし、ビックリするくらいのゲロシーンもあって思わず笑ってしまった。今年はやはり『コクソン』のゲロシーンが強烈だったけど、こちらも負けず劣らず。

タイトル通り「この世に私の居場所なんかない」とふて腐れていた主人公が、最後に居場所を見つけることが出来たのか…というのは、解釈に委ねられるところで、ささやかな幸せを手に入れているようにも見えるし、それでいてどこか寂しげな印象も残る不思議なラストシーンが余韻を残させた。
初監督でこの出来は素晴らしいし、こういう小規模で味わい深い映画にお金出すNetflixはエライ。ブレア監督にはもっとたくさん映画撮って欲しいな。

(2017.118)
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