JessYamamoto

96時間のJessYamamotoのネタバレレビュー・内容・結末

96時間(2008年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

『96時間』はいい意味で浅い映画でした。
浅い、よく言えばシンプルな内容で如何に観客を納得させられるか、ここに尽きると思います。

まず冒頭の部分。
古い過去の映像が流れた後に主人公の最初の台詞が「ため息」。
この時点で、開始1分にして「過去の幸せと現在の不幸せ」を語ってしまっている。
その後17歳の娘と元妻との再会のくだり。
誕生日プレゼントのカラオケマシーン(ダサい)を手にして向かったところ、
娘は新しい金持ちの父親から馬一頭をプレゼントされてると。
ここでもう、ダメダメ親父確定です。哀し過ぎます。この間約10分。

でポイントとしてはダメダメ親父で元妻からは冷たくされてるんですが、娘は愛してくれてるんです。ここがこの先の奪還劇において観客を味方につける伏線となります。

その後、パリ旅行を切望する娘に対し、一度は反対するも渋々了承する主人公(なぜ前の父親の了承が要るのかよくわかりませんが)。
ここでも「パリは危険だ」だの「着いたら必ず電話しろ」だの愛情の空回り加減が炸裂してます。
空港まで見送りにいったときの「着いたら電話、な」のジェスチャーとかウザい父親度満点です(この演技最高!)。

で、案の定娘はパリで誘拐され、主人公の奪還劇が始まります。
だいたいこうゆう奪還劇とか復讐劇とか、家族愛が絡むアクション映画になると、家族のためなら何やってもOKみたいなハチャメチャな暴走と、「そんな偶然あるかい」みたいな都合のいい展開でツッコミ所満載になるんですが、この映画もまさにそうなります(笑)。
でも序盤のくだりがあるおかげで、ダメ親父がイケイケになって暴れまわる姿に、もう観客は味方になれるんです。
敵をなぎ倒していく姿に、完全に応援できるんです。

これの正反対がドラマの『24』で、あれはアホ親父とアホ娘、アホ嫁で、もうツッコミ心しか生まれません(笑)。
(そういえばあの娘も「キム」って名前だったっけ。)

この『24』に代表されるように、家族愛アクションが蔓延して観飽きそうななか、敢えてこのジャンルに飛び込み、「正解」を導いた『96時間』は優秀です。
原題もシンプルに『TAKEN』。
邦題もそのまま『テイクン』でよかったんじゃないでしょうか。
JessYamamoto

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