JessYamamoto

シン・ゴジラのJessYamamotoのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

シン・ゴジラは公開時に劇場で見ました。

328名の豪華キャストが話題になりましたが、ここまで来るともうね、脇役のクセがスゴい(笑)。
しかも各々の個性派俳優が短いカット割の中でちゃんと100パーの演技をしてくるから、スパイスが多すぎで味がよくわからなくなるという。。
この役者、名前なんだっけ?とか邪念が生まれて前半は全然ストーリーに入っていけなかったです(笑)テンポもメチャクチャ早いし。
でも段々この雑多な演技合戦が妙に心地よくなってきてね、なんか笑えてきちゃいました。
シリアスな場面の緊張感の中で必死に笑いを堪える快感。
いちいちカメラ目線とか、台詞のタメが効いてたりとか、会話のテンポ感だったり、、、そういう編集やカメラワークも含めた演出が、だんだんコントに思えてくるんです。
で、笑かしにかかってんのかなコレ?って思うじゃないですか。

次の瞬間、完全に笑うんです。

ゴジラの初期形態の顔。「あ、やっぱ笑っていいやつだコレ」って。
疑念が確信に変わります(笑)。

でもそのシュールな笑いにはちゃんと意味があって。
日本政府の対応の鈍重さや法整備の脆弱さ、米国の属国と揶揄されるような外交関係の現実をシニカルな視点で描く「喜劇」なんです。
なるほど、庵野さん、そういうセンスもあったのか!って感心しちゃったんだけど、よくよく考えたら、アニメという本来子供向けであったメディアに、社会や人間の本質を投影し、大人が唸るような作品に昇華させてきた庵野さんだからこそ出来た手法なのかなと。
完全に大人向けの怪獣映画ですね。
ただ、ここまで高度な笑いのセンスで勝負してくるとは思いませんでした。
われわれ日本人の情けなさ、滑稽さに対する自虐・自嘲の笑いがありました。

そしてね、イタズラが半端ない。
庵野秀明脚本・総監督ってことでどうしても例のアニメのイメージが先行するじゃないですか。
それを上回る庵野総監督の開き直りっぷり!
この絵の構図どっかで見たぞ、って思いながら観ていたら流れたBGMがモロに(笑)。
しかも数回流れるこのBGM、次々にアレンジされて豪華になっていくという。。。
完全にテンドンで遊んでるんです(笑)
その他にも、やや見づらい大きめフォントの日本語テロップ、石原さとみ演じる気の強い日系外国人女性とそのネーミング、「ヤシオリ作戦」、「ゴジラ、完全に○○」という台詞、そもそもゴジラが××に見える点、、、、、
あのアニメのイメージを逆手にとって好き放題遊んでるのが露骨過ぎて気持ちよかったです。

キャストのMVPは余貴美子。よく芸人の友近が大物女優さんとかをパロってるネタ、あるじゃないですか。
あれをガチの女優さんが本気で返して来た感じ?
しかも微妙なタメで早いテンポの会話リズムに絶妙なアクセントを与えてました。
シリアスな場面を喜劇に見せる演出を一番リードしてましたね。

次点で石原さとみ。英語の発音が酷いとか言われてますが、これね、ほとんどわざとやってると思いますよ。
だってキャスティングの時点で完全にCMイメージで遊んでるじゃないですか(笑)。
(注:石原さとみは当時英会話スクールのCMに出演していた)
ルー大柴的な単語の使い方も、外来語を極端な英語の発音で言うあたりも、喜劇的な誇張としてはベストな演技なんです。しっかり笑わしてもらいました。いい意味でね。
JessYamamoto

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