木葉

ビジランテの木葉のレビュー・感想・評価

ビジランテ(2017年製作の映画)
3.8
どこまでいっても救いがなく重たく深く抉られ、破滅的で心痛くなる作品。韓国映画アシュラを思い出す。日本映画もここまで来たかとぐっと込み上げるものがあった。壮絶、圧巻のフィルムノワール。登場人物も閉鎖的な地方で救いようもなく悲しいくらいに投げやりに生きてる人たち。
大森南朋も、鈴木浩介も、桐谷健太も、篠田麻里子も、狂ったように素晴らしい。
地方の閉塞感、廃れた感を息が詰まりそうになるくらいに映し出す。そこに広がる、闇、暴力、憎しみ、裏切り、汚職、ぬるま湯に浸かりながら私腹を肥やし上の顔色を伺う市議たち、中国の不法滞在者を排除しようとする人たち(自警団)この自警団のことをビジランテというらしい。
大森、鈴木、桐谷は、幼少時に排他的で威圧的な父親から容赦ない暴力を受け、トラウマになり、それにより大森は家を出て行く。
父親の死が、彼らを結び付け、醜い相続争い、それが犯罪にまでいってしまう。
父親が亡霊のように彼らにまとわりついて、彼らからは生きる希望はなく邪気しか出ていない。
地方特有の閉塞感、草臥れた感があり、鬱憤がたまり、誰にも吐き出せない。
デリヘル店長の桐谷の歩き方、市議役鈴木の全てを呑み込んでのラストスピーチ、借金を抱え若い女と逃げてきた大森の時折見せる不気味な薄ら笑い。どれをとっても素晴らしい。
人はしがらみから脱しようとしても、なかなか抜け出せない。そのしがらみの中でうまく立ち回り、生き続けなければならない。闇の中でしか生きられない人たちを描いた問題作だ。
木葉

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