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ワイルド・スピード/ジェットブレイクのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.7
 寂れた田舎町で互いを最高の相棒と認め合う妻レティ(ミシェル・ロドリゲス)と、元カノの幼い息子のリトルBことブライアンと静かに暮らしていたドム(ヴィン・ディーゼル)だったが、平穏な日々はそう長くは続かない。『ワイルドスピード』シリーズも4あたりから邦題の付け方が大変雑というか、英語のサブタイトルが付けられているため、結局メガマックスとかユーロ・ミッションとか言われても何本目だか私のようなにわかにはさっぱりわからなくなった(ワイスピあるある)。ポール・ウォーカーが出演していた頃の『ワイルドスピード』シリーズは純粋にスピードの熱狂とカーチェイスを醍醐味にしていたように思うが、その後はスピン・オフや何だか地球規模の危機にドム一行が立ち向かう凄まじいスケールの映画になってしまった。エレナの死から5年後、失意のどん底にあるドムは車いじりに夢中になっているがユニバーサル映画もドル箱スターを休ませておくわけにはいかないと4年ぶりにドム一行が新たな敵に立ち向かうのだが、いきなりミスター・ノーバディが何者かに襲撃され、救難信号を送る様子が映し出されかと思えば、拾い集めるのは昔懐かしいあの頃の連中ばかりで、さながらドム一行の同窓会の趣だ。まぁ何というかジャスティン・リンが監督として再登場した時点で、ハン・ルー(サン・カン)の再登場は織り込み済みだったわけだが、まさかの東京での再会とはしばし意外だった。しかし流石にショーン・ボズウェル(ルーカス・ブラック)まで再登場させるとはいやいやセイでしょと。どんだけワイスピ古参を無駄に喜ばせるのかと。

 ジェームズ・ワンとF・ゲイリー・グレイが続投した2本をジャスティン・リンがどう観たかは定かではないものの、やはりシリーズに本気で片足を突っ込んだものとしては『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』を観よという声が聞こえてくるようだ。映画として最も重要なのはドミニク・トレットの血を分けた弟のジェイコブ・トレット(ジョン・シナ)の登場なのは間違いないのだが、はっきり申し上げてジャスティン・リンはジェイコブの描写にほとんど身が入っていない。80年代のサーキット時代を経て、ドミニクの逮捕から再会までの場面にはドミニク・トレットの背景が垣間見え非常に興味深いのだが、何というか単なる掌返しで兄弟の確執なんてそう簡単に埋まるのかは大いに疑問も残る。父親の死に際に関し、極めて重要な情報を共有する2人が、地球の存亡を占う両側に分かれているというのは有りがちな設定なのだが、そこに前作のサイファー(シャーリーズ・セロン)を搦めたのは吉だったのか凶だったのかはっきりと評価が分かれるところだろう。その後二手に分かれるご一行の様子の中で、どういうわけか東京の描写は『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』よりも数倍いい加減ではっきり言ってテキトーな『キル・ビル』加減で、逆にロンドン側の描写はすっかり忘れていたマグダレーン・“クイーニー”・ショウ(ヘレン・ミレン)の描写もあり、丁寧でセカンド(ロンドン班)とサード(東京班)とのはっきりとした落差を感じた。エディンバラのカー・チェイスは例の磁力システムが新機軸だが、手元のつまみを45度回転させるだけで差配し放題なのには馬鹿っぽさを越えた何かを見た。本当にあの軽装で宇宙に行く場面の馬鹿っぽさも相当な脳筋ぶりを見せつける。最後の食卓の場面の高揚感なんてうっかり飛ぶよ。この調子でもう行くとこまで行って欲しい。
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