かれこれ4回くらい観たので、いまさらレビューするまでもありませんが、そろそろ「LEVEL2」も観なきゃいけないので、一応記録しておきます。
白石和彌監督は、「凶悪」で驚愕し、「日本で一番悪い奴ら」で実力のある映像作家と確信しましたが、「彼女がその名を知らない鳥たち」は、残念ながら勝手な原作のイメージが邪魔してしまい、「サニー/32」を観てがっかりという印象でした。
そんな経過があったので、この作品のブチギレた演出は最高でした。何より役所広司さんの芝居に尽きますが、標準語しかわからないひとには、この広島弁は強烈です。演技がリアルすぎてところどころ意味不明なセリフも…。終盤まで大上の存在感は消失しませんが、彼の不在を感じさせない後半の松坂桃李さんの活躍もなかなかです。この正義感しかないエリート警察官が「LEVEL2」でどのように豹変するか…。
ほとんど脇役でしたが、中村倫也さんのキレっぷりも見応えがありました。「愚行録」で印象にありましたが、当時はそれほど有名でもなかったので、この作品から注目しはじめた記憶があります。他にも個性的な俳優陣がなりきって出演していますが、それをまとめた白石和彌監督の演出が作品としてのクオリティを高めています。日本のエンタメ映画にありがちな安っぽさもありません。
日岡が暴力団の撲滅を主張するところで、大上がマル暴の役割を説教する場面があります。少し納得することもあれば、それによって被害に遭う善良な市民は救われないのでは…という疑問もあります。暴力団対策法がなかった昭和63年当時と現代とでは暴力団の社会的な意味あいが変化していますが、なんとなく象徴的なシーンだったように思いました。