ベビーパウダー山崎

暗くなるまでには/いつか暗くなるときにのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
衰退していく「映画」に手を出し、いま表現者として何かしら刻むためにはこれほどまで複雑にしなければならないのかと途方にくれる。
衝動からのデタラメさではなく、作為的に映画を混乱させていて、悲劇の歴史を抱えながら、その作り手の怒りは己の表現にぶつけるわけではなく、ぬくぬくと映画を見ている私たち客に向けられていて、大音量のダサいんだがよく分からないクラブのくだりから画面は、配信が乱れた、もしくは繋がっていた配線が猫に噛られたかのような暴力的なノイズに襲われ、ここまで必死に付いてきた私たちさえも切り捨て断絶していく。
掴み損ねていく「話し」が縦横無尽にいくつも転がり、奇形したホン・サンスのように反復し、成熟しきれないアピチャッポンのように夢遊していく。つねに死があるが、終わりも始まりも途切れなく、つまりこの創造された世界は「メビウスの輪」。アノーチャ・スウィチャーゴーンポン、幼さはあるが、映画をブチ殺そうともしているのでもう一本ぐらいは見たい作家。