mrかっちゃん

ファースト・マンのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.4
デイミアンチャゼル監督の前作「ララランド」は僕にとって思い出深く劇場に何度も足を運んだ作品です。
シネマオーケストラの生演奏で堪能した
「ララランド」は格別でした。
今となっては切ない記憶。

改めて映画の良さというものを再認識した作品です。
そして今作「ファーストマン」は監督の挑戦と気合が全編から伝わってくる力作。
音楽映画ではなく史実を元にしたストーリーで、誰もが知っている月面に初めて降り立った人アームストロング船長の話で、
主役は映画ファンなら嫌いな人はいないであろうライアン・ゴズリング。

今作が何より良かったと思うのが、アームストロング船長の描き方。
月に行くという当時の技術力を考えると無謀とも言えたミッションに身を投じた理由を、数々の苦しみや葛藤を抱えどんな思いで月面に足跡を残したのかを彼の確かな演技力で表現しています。
あくまで偉人ではなく普通の人だと演出していたことで共感出来る場面がいくつかありました。
月面に降り立ったときアームストロング船長が抱いていた感情とフラッシュバックする記憶。
とても悲しく切ないがそれを乗り越えた時の表情の演技はまさしくライアンの真骨頂。
妻役のクレアファイもとても存在感がありよかった。
ライアンの演技があまり感情表現をしないキャラクターなので、逆にしっかりとクレアは感情表現していていい。

何より今作のすごいところは音響。
物語の静と動のメリハリがはっきりと分かれている作品なので、訓練シーンやロケット発射シーケンスのシートが揺れるぐらいの轟音は映画館ならではの体験。
本当に迫力が違います。
アカデミー賞で音響編集賞をノミネートされているので、受賞してほしいですね。

とにかく切実剛健に作り上げて余計なものを省いたソリッドな作品になっています。
それだけに序盤はゆっくりなので少し眠くなってしまったことを告白します。
申し訳ない。
悪く言えば遊びの部分や余白がないと言うべきか。
個人的には、ある緊迫したシーンを境に一気に面白くなったと思います。
監督の毛色の違う作品でもこなしてしまう技量は確かなものだと思う。
さすがです。