あんがすざろっく

ファースト・マンのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.0
今朝のトップニュースは、はやぶさ2の話題です。
はやぶさ2号、もうすぐ小惑星リュウグウにタッチダウンするようですね。
成功すると良いのですが。
宇宙への冒険は、人が惑星に降り立つという挑戦から、無人の探査機を操作して、惑星の物質を採取する計画へと進んでいったのです。
50年余りの時代の中で、宇宙への飽くなき探求は留まることなく、変革していきました。

この作品は、人類史上最も歴史的な偉業を描きながら、一人の人間の小ささを描いた作品でもあります。
宇宙でのシーンはあるものの、メインになるのは地上でのドラマなので、「ライトスタッフ」に近い作りですね。

ちょっとネタバレもありますので、未見の方はご注意下さい。











まぁ、とにかく怖いの何の。
宇宙飛行士を目指す人達って、どうしてあんな危険な仕事に真っ向から立ち向かえるんでしょうね。
機体が振動しただけで、何処か壊れてしまうのではないか、アラームが鳴っただけで、機体に異常が起きたのではないか、観ているこちらまで生きた心地がしません。
デイミアン・チャゼル監督はまだ30代前半のはずですが、この演出は見事なものです。もうベテランの風格ですね。

その期待にしっかり答えるのが、「ラ・ラ・ランド」でもタッグを組んだライアン・ゴズリング。
あの、ニール・アームストロング船長を演じます。
決して気負いを感じさせないのは、監督を信頼しているからでしょうね。

作中ニールは、幼い長女を病気で亡くしてしまいます。
このことが、後々まで彼に影響を及ぼしてしまうんです。

その後NASAの宇宙計画に志願し、見事審査を通ったニールは、一家で基地の近くに引っ越します。
愛する妻、長男と次男も一緒に同行しますが、子供と接するシーンのほとんどは、妻ジャネットとの間だけ。
勿論、ニールは仕事に忙殺されているからでしょう。
しかし、それだけではないニールの陰が浮き彫りになっていきます。

アポロ計画最大の悲劇となった、訓練中の火災事故。
この事故で、ニール達は3人の仲間を失います。
その葬儀の最中、ニールは長女の幻影を見てしまうのです。
耐えられなくなるニール、「もう帰ろう」とジャネットを促しますが、ジャネットは「もう少し片付けを手伝ってあげないと」と諌める。
ここで決定的に、2人の間に溝が出来てしまいます。

ニールはずっと、長女を亡くした過去に囚われ続けていたんです。
ですが、それを妻や息子達には語りません。
ニールの気持ちは内側に向いていて、妻や息子達には向いていないのです。

ついにアポロ11号に搭乗することが決定したニール。
出発の為の荷造りにかこつけて、子供達にお別れの挨拶もしません。
その態度に、ついにジャネットが激怒。
あなたが事故に遭って亡くなったら、息子達は父親を失うのよ、息子達に話をする責任があるわ。

ジャネットに促されて、息子達と言葉少なに話をするニール。
本当は、ニールも帰ってこれないんじゃないかと不安だったのかも知れません。

そして、ついにアポロ11号は打ち上げ。その後の話は、皆さんもご存知のことと思います。

人類初の月面到達。

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ」

ニール・アームストロングが残した言葉です。
全世界の人々が(恐らくソ連の人達だって)、この瞬間を固唾を呑んで見守っていたでしょう。

世界中の人々の心に響いたのは、多分「人類にとっての大きな一歩」だったからでしょう。

しかし、本作で描かれるのは「一人の人間の、小さな一歩」なんです。

少なくとも、ニールは父親としては立派ではないと思います。
残された家族に目を向けていない。
英雄として迎えられたニール・アームストロングには、こんな物語があったのです。

あのラストに、僕はあまり希望を見出せませんでした。この後ニールがどんな人生を歩んだのか、
それもいつか映画で観れるのなら、観てみたいですね。
あんがすざろっく

あんがすざろっく