【バガボンド】
ヴェネツィア国際映画祭
「金獅子賞受賞作品」
畑で野焼きをしている風景と不安になる曲。そこで「ある遺体」が発見されるところから物語は始まる。
名は「モナ」。
若い女性で、体にはワインが掛けられていた。彼女の身に何が起こったのか。
と、この“あらすじ"だけを見ると「死の真相」をサスペンスフルに描いた作品に思えるけどそうじゃない。そこに重きは置いていない。
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
彼女が亡くなる「最後の数週間」を目撃した人たち。彼らはモナの何を見たのか。各々の価値観や考え方をもとに彼女を回想し証言していく。きっと映画を観終わった方々も思い思いにモナを語るはず。
彼女は何故
「放浪の旅をしていたのか」
冬の一人旅。
金は無くあても無い。大きなリュック。見窄らしい身なり。身体は悪臭を放ち汚れている。
ある人は彼女の印象を口にする
「あの子のように気ままに生きたい」
人によっては自由にも逃避にも
人によっては気楽にも孤独にも
出会った人たちからの質問にモネは“簡素に"答える。「気ままにね」「気楽よ」「楽して生きたい」なんて具合に。
でも何だかおかしいぞ。
その言葉とは裏腹に、時折沈んだ表情を覗かせる。道中の出会いや出来事によって少しずつ見えてくる彼女、と思えば見えなくなる彼女。
自分の感想はモネを「自由」でも「逃避」でもなく、「こんな人もいる」。これだけだった。“辛い"や"気楽“とか表面的な事ではなくて、この生き方しか出来ない人もいるなあ、と。映画「WANDA/ワンダ」でも似た感情を覚えた事がある。
作中で好きなシーンがある。
モネが献血をしているシーン。あの時、彼女は何を思っていたのだろう。そこに本当の彼女を見たような気がする。本人ですら気づいてないような彼女自身を。
「献血」
と、聞くと思い出す。
その昔、まだ学生だった頃の話。
近くあった映画館。そのビルの中には献血ができる場所もあった。
当時はそこで献血をすると映画のチケットが貰えた。それを知って次々と名乗りを挙げたのが、私を筆頭とするアレな5人組。もちろん目的はただ一つ。
「タダで映画を観る」
腕が痺れた?
生きている実感を味わえ。
気分が悪い?
まー食費が浮いて羨まし。
そうやって互いに支え合いながら上映している映画を確認すると…
「ラスト・オブ・モヒカン 」
全員がエリートクラスの馬鹿と無知。お恥ずかしい話ながら大いに盛り上がったのを覚えている。
最後のwwwモヒカンってなにwww
断髪式www 北斗のwww拳スwww
仕方がなく観た映画。モヒカンを見てバカ笑いするつもりでもあった。
「約2時間後ー」
映画館から出てきた私たちは一変していた。涙する者。漢の顔になっていた者。血筋を大事にしようと決めた者。映画に心奪われた者。腕が痺れ続けた者。
モネがどんな思いで献血をしていたのか
私達がどんな思いで献血をしていたのか
みてみてー
並べると悲しくなるー