Inagaquilala

セザンヌと過ごした時間のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

セザンヌと過ごした時間(2016年製作の映画)
3.6
大学ではフランス文学を専攻していたのに、この作品で描かれる、作家エミール・ゾラと画家ポール・セザンヌの交流については知らなかった。セザンヌのほうが1歳上で、生前には認められることのなかったセザンヌに比べ、ゾラのほうは華々しくフランスの文学界で活躍していた。どちらかというと、年下のゾラのほうがあたたかくセザンヌを見守るという役割だったらしいが、この2人の40年にわたる交流が描かれる。

作品で興味深いのは、セザンヌが作品で描いた生まれ故郷である南仏エクス=アン=プロヴァンスの美しい風景がたびたび挿入れされることである。ある意味旅情を誘うそのショットが、このふたりの交流のキーポイントにもなる。セザンヌの描いた同じ山々が映像として映し出されると、それだけでやや得をした気分にもなる。現実の人生では「明」のゾラと「暗」のセザンヌ。その対比のなかで、ふたりの交流を見ていくのもなかなか興味深い。

とはいえ、実話であるという縛りもあるだろうが、ドラマとしては盛り上がりに欠ける部分も無きにしも非ずだが、その美しい風景描写に免じて許してしまおう。とにかく芸術家たちの実話物語は、それだけで自分は好きなので、ついつい評価も甘くなってしまう。セザンヌの絵が好きならもちろん、あまり関心なくてもこのふたりの交流はなかなか面白い。
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