FATMAX夜食のデブロード

アメリカで最も嫌われた女性のFATMAX夜食のデブロードのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

メリッサ・レオの演技は相当なモンだが正直伝記映画としては淡々としている。
というかどうにもこうにも観ている時は胸糞が悪かった。

だがコレ、観る方向を変えればブラックコメディとして考える事も出来る。(理由は後ほど。)もちろんゲラゲラ笑える感じのシーンはないが。

主人公が誘拐された所から話は始まり、その合間合間に今までの生い立ちや人生が描かれるタイプの構成。

その主人公である女性、日本で有名ではないが本国では結構知れた相当な無心論者の女傑だそうだ。

つまりは活動家なのだが、コレがとにかく口が悪い。

ソレだけでなくやり方も強烈。
更にVSキリスト教なのだからタイトル通り「アメリカ人の大半がキリスト教だし、そりゃそうなるわな」という感じの人間。
最近では日本でもよく見かける過激な主張でケンカ吹っかけるタイプのアレだ。

実際 確かに良い事もたくさん言ってるし、若い頃にも当時の人種差別にも果敢に否を訴えただけあって、言葉に説得力はある。
そして活動は徐々に広がりNPOにまで大きくなるが、カリスマ性が高い代表な一方で単純に奔放であり我も強く、口は達者だが人としてはかなり卑屈でもある。

劇中で彼女自身「祈る自由祈らない自由」を訴えるセリフがあり、その上で保守的なキリスト教側と舌戦を繰り広げるのだが、行き着くのは終始相手の全否定で、結局は「祈るな」という結論に至っている。

要は最近の言葉で言えば"論破厨"だ。
エモーショナルではあるがクレバーではない。
(↑コレがこの映画を観ている時にワシが胸糞悪かった理由。相手側も保守的なので双方YESorNOしかない。当時はソレぐらいやらないと伝わらないという「時代のせい」もあるが、にしても"どっちもどっち"だ。)


父親がカタブツのキリスト教の様で反面教師的にそうなった感じに映画では見えたが、自身が超絶に《自分が正義だ!》であったがゆえに自分の息子(長男)は人生を狂わされ、アルコール依存からセラピーを受け、遂には保守的なキリスト教徒となり今は親である主人公の成果を壊す為のロビー活動をしているそうで。

「息子もまた そんなアンタを反面教師としたワケよね。」



更には対決したキリスト教側の論者と結託し討論行脚で収入を得たり、側から見れば「きったねぇ〜なオイ!」なんて事もやっていた。もうゲスな奴である。
しかしソレはNPO活動資金として必要なのかな、と想像もしつつ観ていた、

…のだが、結局は《裏帳簿》つけるぐらいに資金が潤沢になっちまってんだがら結局"何だオメエは?"となってしまう。

割愛するが少ない家族構成になった後半からはもうハッキリ言って

『宗教全否定なお前こそやってる事が正にカルト宗教の教祖じゃねぇか!』

なワケですよ。

そしてあの結末。

確かに悲惨な結果。
言うても犯罪の被害者。
責めるべきは犯罪者。
(↑まぁ〜クソ野郎ですわ、1人を除いて)

でも通して観てると"身から出たサビ"にも思えて、ぶっちゃけ〈いたたまれない〉みたいな感情は出なかったというホンネ。

確かに色々良い影響を与える一方で身近な登場人物には負の影響を与えまくりであり、とどのつまり因果応報にも思えてくるこの作品、結局は超ブラックコメディなのではないかと。

伝記映画として考えた場合、序盤こそ面白いが正直ランタイムの割に後半はイマイチ。単純に盛り上がりに欠ける。
結果クライマックスも強く攻めてくるまでには至らず。

そして主人公にも犯人にも一切の感情移入出来る要素が無く、エモーショナルな活動はインパクトこそあれ 害悪もハンパねぇな…という結論のまま映画は終わった。

映画としてもイマイチ弱くてキャラクターも嫌いだ。
となると素直にスコアも低くしますよ。
汚い部分をきちんと汚く描いた事とメリッサ・レオの演技力で上乗せはしているけどね。