岩嵜修平

勝手にふるえてろの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.0
勝手にふるえてろ

普段、恋愛映画とか観ない人にこそ、体感して欲しい心のふるえ

たまらんですよ。悶えますよ。
頭かかえますよ。顔、真っ赤になりますよ。

画面上にいる松岡茉優の中に、ヨシカの中に、きっと、あなたが居るんじゃないかな。どこか、胸の奥にグサッと来る感覚があったんじゃないかな。
ラストシーン、思わず、自分自身に呟いたんじゃないかな。

映画が好きで、週一くらいのペースで観に行っちゃうような人には、きっとドンピシャでしょう。

作品の中に入り込んじゃうというか、感情移入せずにはいられない感覚。
それって、脚本や空間や演技の上手さはもちろんのこと、その設定の妙も組み合わさらないと成り立たないことで、綿矢りさ原作×大九明子脚本、素晴らしいなと。
綿矢りさって、正直、芥川賞受賞時のイメージが強過ぎて『インストール』の映画を観たくらいでフォローできていなかったのだけれど、こういう教室の隅に居る人の心情を丁寧にしつこく描ける人だったのか…!
大九明子監督作品もガッキー目当てに『恋するマドリ』をDVDで観たくらいで、名前を観た時「新人?」と思ってたけど、とんでもない才能だぁ。瀬田なつき監督と違ったタイプだけど、また新たな鬼才との出会いに感謝。

兎にも角にも、松岡茉優の凄まじさよ。
同世代の俳優では五本指に入る演技の巧みさは、それこそ『桐島』の時から発揮されてて、『リトル・フォレスト』でも『あまちゃん』でも、そして『問題のあるレストラン』でも『ちはやふる』でも『真田丸』でも、それぞれに全く違った役柄で輝きまくってて、「正直女子さんぽ」や「うつけもん」でバラエティを回すトーク力まで見せつけて、「そのおこだわり…」でフェイクドキュメンタリーなんか見事にこなしたり、『映画 聲の形』では本人が想像できないような声の演技までしちゃってて、あらゆる意味で圧倒的にタレンテッドな俳優な訳ですが、過去のどの作品よりも、この作品のヨシカが素晴らしい。
全ての作品において「本人もこんな感じ?」と思わせるほど憑依型の俳優(それでいて何となく努力の影まで見せるので心憎い)なのだけれど、これこそ「まんまじゃねぇの?」って思うくらいシンクロ率が高い。

身体の動き、表情の微かなゆらぎ、言葉の大小、全てにヨシカの感情が乗っかっていて、それを見事に大九監督が切り取る。

話の展開や構造自体、型破りではあるのだけれど、演技がガッチリしてるから、全く気持ちがひかない。120分間ずっと見つめていたくなる。

そして、その型破りに見える展開においても、アングルや画角が計算され尽くされていて、気持ちが良い。

あっと驚くような展開があっても、画面はスムーズに流れていく。

奇抜な発想力と、安定した製作技術が組み合わさると、こんな作品が出来上がるのだなぁ。

もう1人の主役と言っていい渡辺大知は、最初は、惹かれる要素を全く感じない、うざくてヤバい奴だったんだけど、後半にかけてヨシカと同様に理解していくと、愛すべき奴と納得できるというか。

2回目の鑑賞時には、最初から、全ての行動が一心不乱なヨシカへの愛情が故のものと思えるようになりました。

他にも、あんなにキレイな顔してるのに、ヨシカ的な人と仲良くなっちゃう根っこの優しさを表現する石橋杏奈も、脇を固める片桐はいり、古舘寛治、柳俊太郎、前野朋哉、池田鉄洋といった唯一無二の顔つきを持った方々も、キャスティングが完璧。

北村匠海も、何考えてるか分からないけど悪い奴じゃなさそうなイケメンっぷりは流石でした。(『陽だまりの彼女』から大きくなったなぁ)

イケメンの方に聞きたいのだけれど、モテない勢としては、タワマンのベランダでの、ヨシカに対するイチの反応は、ああ言うショッキングな事実があったにせよ「イけた札」(やれたかも委員会風)をあげたくなっちゃったんだけど、無しなんですかね?
「友達止まり」なんですかね?

そこら辺の、自分を弁えてるというか、諦めてる感じも含めて、ヨシカにもの凄く共感しちゃうんですが、イけてたならもったいないようか気も。

そこら辺、自分の置き換えも含めて、感情揺さぶられまくりで、中盤からラストにかけての、あの心の揺れ動きをもう一度、体感したくなっちゃって、2週連続で劇場に足を運んでしまいました。

何回でも観たいです。
大好きです。

年末年始に見られて良かったなぁ。
岩嵜修平

岩嵜修平