マーくんパパ

メゾン・ド・ヒミコのマーくんパパのレビュー・感想・評価

メゾン・ド・ヒミコ(2005年製作の映画)
3.8
銀座で長年ゲイバー卑弥呼のママだった男がゲイ専門の老人ホーム(メゾン・ド・ヒミコ)を作り曾ての仲間たちと暮らしている。死期近い男は若い愛人春彦(オダギリ)を介して娘沙織(柴咲)を呼び寄せホームの雑事を頼む所から物語は始まる。家族を捨て母は苦悩の果てに亡くなり勝手に生きてきた父への反感、憤りとゲイに対する嫌悪感も相まって拒絶するが、生活に困窮していることもあり週一の高級バイト条件でやむなく引き受け海岸近くのホームにバスで通うこととなる。どう見てもキモいゲイ爺さんたちの異様な集まり、近所の悪ガキたちから塀に落書きされ物を投げられ、隣の住人は頑なにドアを閉める閉鎖された空間に身を寄せ合う仲間たち。しかし通ううちにゲイとはいっても同じ人間、皆老いて次は自分の番かなと怯えながら孤独に暮らす心情に触れ、父への複雑な感情は消えないものの唯一若い春彦への淡い想いも含め絆されていく沙織。ゲイのひとりヤマサキの夢、女装に身を包み皆でエスコートして横浜のナイトクラブに繰り出し「また逢う日まで」をディスコ調で踊る一体感も束の間、春彦との性交渉試すもやはり男女の愛には到達できず、死期近いルビィを家族の元へ帰すゲイ仲間の身勝手さや父も息を引取り此処にはもう居られないと元の生活に戻る沙織。このやるせないモヤモヤした虚無感をどう集結してドラマを終わらせるのかと思いきや数ヶ月後に沙織の勤務する内装屋に届いた落書き修復工事依頼。〝サオリに会いたい ピキピキピッキー〟全てを払拭する壁に書かれたラストメッセージに拍手!ゲイを見詰めるキツい表情の柴咲に対し、程よい中性感で演じ切ったオダギリがスマートでこの年のキネ旬主演男優賞は納得です。