モダニズム建築の宝庫・インディアナ州コロンバスを舞台にした、コゴナダ監督の長編デビュー作。
韓国に移住した英韓翻訳家の男性が、突然倒れた建築学者の父親を見舞うためコロンバスを訪れる。薬物依存症の母親と二人暮らしをする若い図書館員の女性と出会う。
"Smart phone, dumb human."
素晴らしい。モダニズム建築の美しさ、均整のとれた映像の美しさ、静寂の美しさ、ミニマリズムの美しさ、繊細な人間ドラマの美しさ。視覚的にも聴覚的にも精神的にも洗練されていて、深く心を癒された。
父親との確執、母親の世話。親との関係に"縛られていた"若者2人が出会い、2人の共通項であるコロンバスの建築を巡り語らう中で、"過去のしがらみ"を清算し、新しい人生を模索していく物語。まさに一期一会。新しいスタートには人との出会いが付き物だ。
"建築には人を癒やす効果がある"を体現した建築映画の傑作。建築に無言で語らせる撮影の妙があり、左右対称の構図、又は「非対称でありながらバランスを保っている」構図のショットの連続に心がときめく。
映像面での特徴は、カメラを固定した長回しのショットが多用されていたこと。ココナダ監督は『東京物語』の大ファンで、小津監督作品から少なからず影響を受けているとのこと。個人的ベストショットは、元恋仲の男女の関係性、距離感を映画的に表現した、2つの鏡を使ったワンカット長回しショット。同じ部屋にある別々の鏡に映っていた元恋仲の男女が、同じ鏡の中に収まってキスをし、再度離れて先程とは別の鏡に映り込む。パーフェクトショットだった。
レペゼン、コロンバス映画。いつかコロンバスの建築巡りをしてみたい。豆知識はそこそこに、心で感じるままに。「真心あるモダニズム。」。ガラスは透明性と光を意味する。
音の特徴と言えば、静けさ。鳥のさえずり、川のせせらぎ、セミや鈴虫の鳴き声といった自然音や、車のエンジンやドアの開閉音などといった生活音が中心にある。数少ない伴奏にはヒーリングミュージックが使われている。心が和らぎ、落ち着かせてくれる。
ジョン・チョー&ヘイリー・ルー・リチャードソンの確かな演技力も光る。
コゴナダ監督が韓国系アメリカ人ということで、「アジア人は英語を話せないとでも?」、「君は韓流ドラマの見すぎだ。」「親の臨終に立ち会うのが美徳である。」など、度々挟まれる韓国ネタも面白い。
・撮影期間はわずか18日。
"That architecture has the power to heal."
"The problem with being a tour guide is that you stop seeking. You become some arbiter of tidbit facts... that you start repeating over and over."
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