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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のKUBOのレビュー・感想・評価

4.0
ハリウッドを背負って来た名優メリル・ストリープ、トム・ハンクス競演である。予告編でこの2人が1つの画面にいるだけで期待が膨らんでいた「ペンタゴン・ペーパーズ」を公開初日初回上映で見てきました。

トム・ハンクスが異常に若い! メイクだけかなぁ? なんか見たことない色気のある顔をしてて、恥ずかしい(^^)。

時は1971年、ベトナム戦争に纏わる陰謀の全てが書かれた極秘文書がリークされる。この極秘文書報道の裏側を描く硬派な男たちのドラマ(?)と思っていたら、それだけではなかった。当時、夫の自殺で会社を相続したばかりのケイ(メリル・ストリープ)の成長の物語でもあるのだ。

数組の夫婦が談笑していた後で「では女性はサロンへ」と促され、妻たちが別室に下がるシーンがある。この当時、まだ女性は政治や仕事の話の輪には入れてもらえぬ存在。「サロン」なる部屋が洋館には必ずあるのは聞いていたが、こういう風に程よく追い出されるのね、ってよくわかった。

「母は非常に自信のない女性だった」と息子のドンは言っているが、作品前半のケイはまさに男社会の中で必死に背伸びをしている様子で、上手くスピーチをすることもできない。そのケイが政権に逆らってまで極秘文書を公開する決断を下すまでに成長する女性の映画なのだ。

終盤、裁判所から出てくるケイの周りをあえて女性だらけにしたのも、ケイが女性の社会進出のシンボルとなったことを強調するねらいからだろう。

もちろん、多くの犠牲者を出したベトナム戦争の裏にある政府の陰謀を暴くという物語の核心は編集長ベン(トム・ハンクス)をはじめとするワシントンポストの編集部の活躍を中心にドキドキの展開で描かれる。

また終盤の裁判劇では報道機関の在り方という民主主義の根幹がテーマになってくる。

「報道が奉仕するのは国民である。統治者にではない。」というのは米連邦最高裁による判決文の抜粋である。

アメリカでは修正第1条により司法が政権の暴走に歯止めをかけることができたが、我が日本でははたしてどうだろうか? この当時もニクソンはニューヨークタイムスに記事の差しどめを行っているが、現在の我が国でも「偏向報道」なる言葉が政権側から発せられる。日本の「報道の自由度ランキング」は世界で72位(2016年)だそうである。

ラストシーンがあの有名な「ウォーターゲート事件」の発端なのは、どういう意図からかな? 見たばかりだから、ここから「ザ・シークレットマン」が始まるようだ。原題が「The Post」なことを考えれば、むしろこれからが本番とも言えるし、もしかして「The Post 2」があったりして?

「ハリウッドで最も過大評価されている女優」メリル・ストリープの、トランプへの返事でもあるような本作。「女優は演技で応える」って感じかな? 素晴らしい作品だ。



#「アメリカ合衆国憲法法修正第1条」
連邦議会は、国教の樹立、あるいは宗教上の自由な活動を禁じる法律、ならびに人々が平穏に集会する権利、および苦痛の救済のために政府に請願する権利を制限する法律を制定してはならない。
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