”You chose him."
終盤でリスベットが妹・カミラに言うセリフ。この一言にリスベットの孤独の本質が表れているように感じました。
私はスティーグ・ラーソンの原作ファンだったので、彼亡きあと、他の作者の筆になる小説は、まるで読む気がしませんでした。別物にしか思えなかったので。
ハリウッド版のルーニー・マーラ演じるリスベットを評価する人も多いし、確かに美しいヒロインかもしれない。でも彼女のリスベットはあまりにも弱すぎてツンデレ。リスベットはレイプされて泣くような女ではない。彼女の傷はそんなことを超えるほどに深いのだから。個人的にはノオミ・ラパスの屈強な意思を湛えた瞳と、狂暴な小動物のようなリスベットの方が原作には近いので、スウェーデン版の映像化作品が好きです。(ただもうノオミ・ラパスではリスベットが年を取り過ぎてしまう。。。)
そして何故か2と3をすっ飛ばして、作者の変った4作目をハリウッドで再び映像化。なんだかな~と思っていたら、リスベットを演じるのがクレア・フォイではないですか。『Upstairs Downstairs 』のわがまま気ままなお嬢様役からなんとなく気になる存在で、その後『Wolf Hall』のアン・ブーリンの嵌りっぷりを観て、大注目の女優さんになりました。綺麗なんだけどどこか面白い顔で、非常に印象に残るのです。その彼女が演じるリスベットはどんな風になるのか。何しろ、エリザベス女王ですっかり有名になっていますしね。
で、実際に観てみて、いや、見事。今までのリスベットとミカエルの配役の中では、今回のクレア・フォイとスヴェリル・グドナソンの組み合わせが私にはいちばんしっくりきました。ミカエル・ニクヴィストとダニエル・クレイグのミカエルは、原作より、かなーりごついんです。絶対に戦ったら弱そうな、線の細い優し気なスヴェリル・ミカエルの方がイメージに近い。そしてこの二人だからこそ生きる、ミカエルとリスベットが再会するエレーベータのシーンが素敵。私は高所恐怖症なので、あんなエレベーター止まったらパニックになりますが。
原作を読んでいないので、映画のみでしか語れませんが、1の”父親に火をつけて大火傷を負わせた”という設定が何処かに行ってしまったことを抜きにすれば(原作もカミラとの別れはああなんでしょうか?)、非常に面白かったです。スティーグ・ラーソンよりエンタメ度が高くてミステリー度は減りましたね。これは別物だと思えば、さして気にはなりません。
かなり衝撃的なシーン(ワンシーンですけどね)もあるので、グロ耐性が低い方は心して観ていただきたいのですが、これは核攻撃プログラムを巡る国家間、犯罪組織の争いの形を借りた、お互いを棄てた姉妹の復讐と告解の物語なのだと思います。悲しいお話です。泣かない女・リスベットが見せた涙は、自分自身の行動への後悔と、棄てざるを得なかった妹への贖罪なのかもしれません。
結構見ていて疲れるので、ランボルギーニであんな山は登れない、ドゥカティでそれは無理だろうなど、映画ならではの突っ込みどころを見つけて、適当に息抜きしながら見ることをお勧めします。
それにしても、「世界の幸せな国」の上位にくいこむ国でありながら、北欧のミステリーには女性の虐待が必ずと言っていいほど出てくる。「幸せ」は何をはかって評価されているのでしょうね。