雷電

アネットの雷電のレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
3.3
レオス・カラックス監督作品の初見。
フライヤーとアダム・ドライバーの印象からずっと気になっていた本作をようやく観賞。

観賞者に話しかけてくるような演出まではよくあるとして、作品が始まったと思ったらほとんど全てのセリフがミュージカル調で進行され戸惑いを隠せなかったが間違いなく不思議な映像体験ができる。
このミュージカル調のセリフシーンの全てをスタジオレコーディングで取っているというのだから当たり前に作品の変態さとその前衛的な姿勢を感じざるおえない。

アダム・ドライバーといえば、まるでスターウォーズのカイロ・レンのようにどんどんとダークサイドに堕ちていくヘンリーという男の救いようのない物語。
人形のような扱い(物理的にもそう見えている)をしていたアネットが最後のシーンでしっかりと人間として捉えられているのがヘンリーの中での悲しき、後悔してももうどうしようもない気づきとして描かれている。それでも彼が犯した罪の数々は許されるものではないけれど、愛するものを全て自らの手で、ことごとく失って行く(奪って行く)なんて心を人間として維持することができない。
人生において、孤独に勝る悲しさはないと考える自分にとっては正直一才の共感もできず仕舞いであったが、前述した作品自体が持つ斬新さは一見の価値あり。

作品との相性はさておき、こんな作品を制作する監督の他作品も大変興味が湧いたのでこれから見ていきたい。
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