予備知識の全く無いままで観られて良かった。
タイトルからは何も読み取れず、物語の途中までは、これは一体、何を主題とした作品なのだろうと、ずっと探りながら観ていたのだけれど、ああ、そうかとわかってからは、アイスランドでの美しい映像とあいまって、痛みを伴った繊細な物語に、ぐいぐいと惹き込まれた。
振り返ると、残酷な仕打ちを受けた生き物たちは皆、メタファーだったのだなと気づかされる。
期待外れだったからといって、口の中に唾を吐かれた上に、踏み潰されてしまうカサゴ。
捕まえられたにも関わらず、食べられることなく腐ってゆく魚。
自らの脚を食いちぎらなければ、逃げられなかった鳥。
野犬に襲われた挙句、銃殺されてしまう羊。
そして、閉鎖的で差別的な土地の現実に抗い切れず、身も心も傷つき、追い詰められ、引き裂かれてしまう、ソールとクリスティアン。
その切ない別れに、涙した。
しかし
「会いに行くよ」
の一言に救われた。
少年から大人へと成長したソールは、きっと、広い世界へと飛び出してゆくのだろうと、未来を感じさせられるラストシーンだった。
真実か、挑戦か。
(ただ、エモーショナルな名シーンではあったけれど、他人の子供にあんな命懸けで鳥の卵を取らせるか普通、と、あの親父にはツッコミを入れざるを得なかった)