sensatism

スキン~あなたに触らせて~のsensatismのレビュー・感想・評価

3.7
2020/120
まず最初(一般的な美的価値観から考えて)醜いひとたち、奇形と呼ぶようなひとたちがこれでもかと登場してくる。厚い肉に覆われた老体の女性に初っ端から度肝を抜かす。あれは何だったのか…目がない娼婦、口が肛門の少女(ムカデ人間?)、皮膚がただれた男女、軟骨無形成症の女性…。こうして挙げてみると見た目が醜く描かれる側の性別が女性ばかりなのは偶然ではないだろう。嫌悪感が湧いてくる。そこで健常者である自分の中に潜む差別心と向き合うことになる。完璧なまでに計算された構図とパステルカラーの配色。パステルが持つポップでふんわりとした色のイメージと緻密な構図の背景に相応しいとは言い難い登場人物たち。そのコントラストは打ち消し効果と増強効果どちらもある。群像劇が始まる。それぞれが抱える人間らしい心の動きや悩み、"普通"に生きる我々と同じように繰り広げられる人間関係。たまたま異形にまつわる悩みを彼/彼女たちは有していただけ(だけではない)で人間として生きる上での根本的なものは何も変わらない。ひとにはひとの生き辛さや地獄がある。感情移入は容易い。(もちろん私には到底人生を理解することはできない)。後半以降、先ほど感じたおぞましさは気にならなくなりそれよりも彼/彼女たちの行先が気になり始める。すっかりしっかりハマる。特に、目がない娼婦が盗まれたダイヤと交換で申し出たお願いが「触らせて」だったのがあまりにもちっぽけで慎ましくて彼女の孤独感が現れ出ているようでグッときた。これは他の方も言及していたが各々異なる結末を迎えていたのがこの映画の良い点だった。手術で"健常者"の顔に戻る者、そのままの姿で生きる決意をする者、異形を愛してくれるひとと共に過ごす者、さまざまな生き方が提示されどれも否定されなかったのが良かった。皆どこか歪んでる。それは顔か心かはたまた両方かその人次第であり、その歪みは時として定義が変化し続けるものなのである。

そういや、あのパパは何が異常だったんだ…?ペドフィリア?
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