なみき

デトロイトのなみきのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
5.0
恐ろしい、そして切実な映画でした。人種差別への反発から起きたデトロイトの暴動と、そのクライマックスで起きたモーテルでの事件を映し出す映画。ただ、単純に差別者とそれによって虐げられる人々という構図ではなく(大枠ではそうなのだけど)、もっと冷徹に不条理な現実を切り取っているように感じました。まずは警察側の横暴を目撃させられ、見ていてそれへの反発を覚える。すると住民たちが警察への抗議を始めるのですが、やがてそれは手のつけられない暴力へと発展していってしまい、今度は警察側とともに「これを止めないと」と思わされてしまう。しかしその警察は銃を手に狂ったような暴力へと突き進み、モーテルでの虐殺に至ってしまう。ある立場に肩入れ仕掛けたかと思ったらがつんと殴られるというのを繰り返されるような経験で、「出発点が正当な思想であったとしても暴力は狂気に至る」というのを心の底から感じさせられます。けれど、法も無力であり、もはやどうしたらいいかわからない境地に追いやられてしまう。こうした話の流れと、明確な主人公を設定せずに視点を行き来する構成とがうまく噛み合い、ひたすらやるせなく、そして恐ろしい作品となっていました。
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