なみき

37セカンズのなみきのネタバレレビュー・内容・結末

37セカンズ(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしかったです! 初めの方の当たり前のように搾取されたり、子供扱いされたりしている主人公ユマが、どうにか描いた漫画に「セックスの経験が足りない」とダメ出しされ、出会い系に挑戦してみたり女性用風俗を頼ろうとしたりのあたりは本当に苦しいのですが、そのぶんだけその後の運命を変えた出会いが印象的になる。クマさんとマイさんに出会った瞬間から、世界が一気に広がる感覚が凄まじいです。

また、「セックスの経験のなさ」というところから話が始まるからさも性の話に尽きていそうに感じられますが、そこから「セックスの対象と見なされない=まともな女性として見られていない」という自己否定の段階を経て、マイさんやクマさんやトシヤくんに新しい世界に連れ出され、そこで初めて一人前の人間として自分に触れる人々を知り、自己意識が確立されていくという流れ、そこからさらに自分のルーツやあり得たかもしれない別の自分に向き合うなどといった方向へと進んでいく展開がたまらなくよかったです。

最初にいきなり服を脱がされて入浴するシーンから入ったり、女性向け風俗を利用したときの生々しい描写があったりというのと対照的に、本当に信頼できる男性と巡り合ってからはむしろそうしたテーマがなりをひそめていくのも、自立した個人として生きるなかでセックスだけに拘泥する感覚から抜け出していくさまを表しているようでした。

それにしても、マイさんがよすぎるんですよね。素敵すぎる。あんなふうになりたいものです。
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