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デトロイトのkouのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.5
《重厚な傑作》
1967年のデトロイト暴動の最中に起こった、アルジェ・モーテル事件を題材に、ドキュメンタリータッチで描いた重厚すぎる一作。「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグロー監督。ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールターらが出演している。見終わった後これほどの疲労感のある作品も久しぶりに見た。素晴らしいがゆえに見ている側も心底惹きこまれてしまい、その現実がのしかかる。今年の始まりから、間違いなく、今年のベスト級の作品に食い込んでくるだろう一作だった。

映画の冒頭は、デトロイトの暴動の発端を描く。次第に市街全体に拡大していき、緊張状態が続いていく。アルジェ・モーテルで若者たちが集まる中、ある事がきっかけで事件は始まってしまう。

凄惨な事件に発展する様子は、時に急展開を見せ、時に緩やかに進んでいく。それはとても恐ろしくリアルだ。人の命が無残にも散っていく過程を容赦なく描く。その鋭さが流石キャスリン・ビグロー。前半の群集劇から中盤の密室、後半の法廷での場面まで、すべてが見事につながり、そのサスペンスフルな内容に2時間半があっという間だ。

重厚な作品であり、観る人を選ぶかもしれないが、間違いなく傑作と言える一本。現在のアメリカにも通じる、今見るべき映画であることに間違いない。ラスト、何とも言えない胸の締め付けられる音楽に、涙があふれる。重すぎる一作だった。素晴らしかった。
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